ー私の選んだ「かぞくの形」ー
こんにちは!Love Makes Family編集部です。
既存のかぞくの形に囚われない、新たな生き方のヒントを発信する次世代WEBマガジン『Love Makes Family』、第15回目の連載です。
今回は、インタビュー当時ロサンゼルスで出産を間近に控えていた田崎彩さんにお話を伺った後編です。
後編では、パートナーとのこと、妊娠までの経緯などについて伺いました。
彩さんプロフィール
東京生まれ、35歳。5歳以降、親の仕事の関係で、ある時は日本に、ある時はアメリカにと両方の国に住み、大学以降はアメリカに在住。現在はロサンゼルスでパートナーと暮らしている。※取材時は妊娠中
今のパートナーとは10年ほど前に知り合って、その時は自己紹介をした程度だった。
何かのきっかけでちょこちょこ話すようになり、二人の生活などの価値観がとても似ていて付き合うようになったのも、とても自然な流れだったという。
「子どもを持つかという会話もスムーズでした。真剣にどうするかというよりは良い意味でカジュアルで、だけど二人ともしっかり考えているという流れで、ロスに住んでいるという環境のお陰で、周りのコミュニティや仕事場に関しても心配しなくてよかったんです。もし、今いるのがロスではなかったり、日本に住んでいたりしたらスムーズに進んでいなかったと思います。」
二人とも子どもを迎えるということについて違和感なく思っているということがわかった時点で、次の会話はどういう形で子どもを持ちたいかということだった。
「妊娠、出産については嫌だとも思わなかったし、凄く経験したいという執着もありませんでした。私のパートナーはトランス女性で、話をする中で精子保存をしているという話が出て、どれが一番それぞれにとって良い選択なのか、やってみたいのか、というあらゆる選択肢を話した上で、じゃあ今そういう選択肢があるから、生物学的につながりがある子どもをはじめにトライしようかという結論に至りました。ただ、最終的にうまくいかなければ、養子という選択肢も考えていました。」
トランス男性が妊娠出産する話は少しずつ出ているが、アメリカでもトランス女性との妊活についてはまだ情報が多くあるものではないという。
「はじめに考えたのが保険診療になるのかということでした。職場の人事部に、同性パートナー同士で子供を持つためにする人工授精・体外受精が保険でカバーされるか知りたいと相談したらすぐに保険会社の電話番号を教えてくれました。保険会社の人も、慣れたようにとても快く対応してくださり、相談した結果保険が効くということがわかり安心しました。
次に、病院を調べて、というのもロスの中ではいくつも選択肢があるので、ある程度ですが、なんとなくLGBTQフレンドリーだなというところをいくつか探して、問い合わせをして、自分たちはこういう状況だけどそちらでの治療はどうですかという様な感じで、すぐにビデオアポイントが取れました。初めの病院がとても感じが良くて、私たちの選択肢を話したところ「それは最高なシチュエーションですね」といった感じで非常にポジティブな反応で、話していても、一緒に楽しそうにしてくれました。
LGBTQをサポートするお医者さんはこちらでは多く、その中でトランスジェンダーをサポートしている人もいて、どうやっていけるかというところをいろいろなお医者さんが一緒に考えてくれたり、良い意味で「これは面白い医学だ」と思ってくれる人もいたりします。サポートしてくれるお医者さんがいるというのは強みだと思います。」
彩さんのご両親もかなりサポートしてくれていて、同性婚で子どもを生んだ場合はどうなるのかと日本の領事館も混乱していることについて、日本の外務省に連絡してくれたりしたという。
そんな両親にカミングアウトをしたのは、10年以上前。わざわざ手紙を送るのも大仰だけど、メールでは素っ気無いと思い、手書きの手紙をスキャンしてメールで送ったという。
「『あっそう』みたいな返事でした(笑)。そもそも私が生まれた時も自分の子供が生まれたというより、もう一人、個性のある人間が生まれたという感じだったようなので、自分たちが知らない新しい経験を与えてくれたみたいな反応でした。LGBTQであることがどういうことかの理解はしていなかったと思うけど、面白いことを教えてきてくれたみたいなレベルだと思います。
パートナーについては、カミングアウト前にも会ってはいましたが、妊娠した時に初めてトランス女性だと伝えました。二人が子どもを持つとしても両親は精子バンクか養子になるんだろうなと思っていたみたいで、生物学的につながっているというのは「こんな最高なシナリオになるとは思わなかった。」と言われました。そんな反応をする両親には驚かされるし、喜んでくれる、楽しんでくれているというのはとにかく幸せです。」
そんな彩さんに、子どもに伝えていきたいことについて聞いてみた。
「とにかく子どもには一人の人間として関係を築いて欲しいです。例えば、私たちの友達と関係を築きたいのであれば、個人として築いていって欲しいし、その中で、いくつも安心で安全な頼れる居場所を作って欲しいと思う。
そういうやり方で、コミュニティの強さ、人とのつながりを理解して、コミュニティでつながっていって、他の人に頼って、頼ってもらって社会を築き上げていく、人は一人では生きていけないという部分がわかって欲しいと思います。」
彩さんにとって「かぞく」とは何か聞いてみた。
「昨日の自分では有り得るとは思いもしなかった場所を作ってくれるのが「かぞく」。ただ刺激を受けるということではなくて、夢を見られるし、自分が夢を見てもいいんだ、大げさに夢を描いてそれを追求してもいいんだなという場所です。
安心、安全という部分で自分が安心するということは夢をいくらでも膨らませられるということ。
無限の可能性ではないけれど、前の自分が想像できなかったことが想像できる場所だと思います。」
子どもが話をできる様になったら、大人よりもしっかりと話をする必要がある分、もっと掘り下げて、自分に問わないといけない部分が出てくる。その時に自分の思い込みを発見できたり、もっと実はこうしないといけないという発見、自分がChallengeされるのを楽しみにしているという彩さん。
自分だけ、自分の身近な人だけが前進しても、結局は社会全体が前進しないと、結局はみんなが同じ場所に留まるだけだし、留まるということはイコール後退すること、それはとにかく毎日を乗り越えるだけの生活、もっと可能性が広がる生き方ができるんだったらそっちを選択したいと、常にコミュニティに目を向けている。
彩さんはコミュニティの中で、磨かれた感性とともに、今日も自分と向き合うことやめない。