子育てを通じて「初めて人間になった」FTM夫婦(前編)
こんにちは!Love Makes Family編集部です。
既存のかぞくの形に囚われない、新たな生き方のヒントを発信する次世代WEBマガジン『Love Makes Family』、第12回目の連載です。
第12回目となる今回は、FTMであるまさきさんとその奥様であるツキさんにお話を伺いました。前編と後編に分けてお送りします。
トランスジェンダーが親になるとき、子どもにカミングアウトをしないケースもありますが、まさきさんとツキさんは子どもにオープンにしていらっしゃいます。
前編では、お二人の出会いからスピード結婚に至るまでの仰天エピソード、お子さんを持つまでのストーリーをお伺いしました。
【まさきさん PROFILE】
FTMバーを2店舗経営している37歳。26歳のときに性別適合手術を受け、女性から男性に戸籍変更をした。奥様との間で、4歳と1歳のお子さんを育てているパパ。
●まさきさんの代表を務める【FTM BAR 2's CABIN】はこちらからチェック!
お店ホームページ:https://bar2s-cabin.tokyo/index.html
〇もっと知りたい方はこちらをチェック!
Twitter:https://twitter.com/grammy_djmasaki
【ツキさん PROFILE】
6歳年上の奥様。Twitterでは、FTM妻の視点から本インタビューでは語り切れなかった妊活や子育てについて日々発信をしており、魅力的なイラストで描かれる漫画は必見。
〇ツキさんをもっと知りたい方はこちらをチェック!
Twitter:https://twitter.com/Tsuki_masaki
■「FTMと聞いてびっくりする経験をしたかった」と笑う奥様に出会うまで
―まさきさんがセクシャリティを自認したのはいつ頃でしたか?そこから性別変更に至るまでのまさきさんの歴史を教えてください。
まさき:僕が女性を初めて好きになったのは、小学校2年生だったんですけど、そのときは、自分が「男として」その子が好きだったのかどうかは分からなかったんですよね。
はっきりしたのは、たぶん高校1年生とかだったと思います。僕は、急に男性器が生えるとかは思っていなかったので、実は、先天性ではないのかな、後天性でなったのかなと思っていて。高校1年生、2年生ぐらいのときに、男として女性が好きなんだと自覚をした感じです。
―先天性、後天性というお話ですが、FTMの方の中には最初から男性器が生えてくると思っていたという人もいらっしゃるけど、まさきさんは女性で生まれてきたという意識はあったということですか?
まさき:そうですね、たしかに胸の膨らみや生理はイヤだったんですけど。環境的にも、男の兄弟やいとこが多かったんですよね。その中で唯一、僕だけが女の子で、輪に混ぜてもらえないこととかがけっこうイヤで、もともと男っぽくしていたというのもありますし。
あと、小学校4年生くらいのとき、男の人にいたずらされたことがあって。それがトラウマで余計に「女らしく」するというのがイヤになったというのもあるのかなと。だから、環境的なものあって、そうなったのかなと思っています。
―そういう感情を認めていくというのもなかなか難しいことだったと思いますが、何歳ぐらいで適合手術をすると決めて、実行に移していったんですか?
まさき:僕は、親にカミングアウトしたのが高校3年生で18歳のときだったんですけど、2年後の20歳のときにホルモン注射を始めて、そのまた1年後の21歳のときに胸をとる手術をやって、26歳のときに下の手術をやって戸籍変更しました。
―早かったんですね。個人的には、まさきさんと同世代の方たちは、もっと年を重ねてから性別変更をしている方も多いようなイメージを持っていました。
まさき:当時は、病院選びに関しても選択肢が少なかったので、ぱっと決められましたというのもありますね。
―性別適合手術をすることに対して、葛藤はありましたか?
まさき:葛藤はありましたね。あったんですけど、女性として生きるほうがしんどかったので。できるだけ早く情報収集をして、できるだけ早く治療できる場所を探して、聞いたらすぐに実行に移しました。
―ツキさんは、まさきさんのセクシャリティをどのように受け止めましたか?
ツキ:知っていて出会ったから、何も思わなかったです。“最初男だと思っていて接していて、途中でカミングアウトされてから付き合う”っていう流れが多いみたいだから、それをやりたかったな、びっくりする経験をしてみたかったなっていうのはあります(笑)
■超スピード婚!
ツキさんが提示した結婚条件とは?
―お二人の出会いは、いつだったんですか?
まさき:6年前の2015年に、新宿二丁目にあるLGBT MIX BARで知り合いました。1月に出会って、2月に付き合って、4月に結婚しました。
―早い、すごいスピードですね(笑)結婚を決めた当時から、お子さんのことは視野に入っていたんでしょうか。
まさき:最初その話はしていなかったよね。
ツキ:そうだね、してなかったね。でも、結婚しようと思ったのは、子どもを育ててくれそうだなと思ったからだった。
―ちなみに結婚をしてほしいと言ったのは、どちらからだったんですか?
ツキ:まさきに選択権はなかったよね(笑)
まさき:(笑)僕が、結婚願望あると言う話をしたら、奥さんから「条件をクリアしたら結婚してあげる。」と言われて。
―どんな条件だったんですか?
ツキ:まず、1つ目はサラリーマンをやめてくれ、と。
まさき:そう、何でも良いから、自営で仕事してくれ、と。自由に動けるようになってほしいと。平のサラリーマンがすごいイヤだったみたいで。2つ目が、結婚するなら苗字を変えたくないから、氏は私の方にしてほしいと。それは「全然大丈夫。改名は得意だから。」みたいな(笑)だから僕の今の名前は、上も下も原形がない(笑)
ツキ:3つ目は、結婚届と一緒に離婚届を書いてほしい、と。
―それいいですね!素晴らしい発想ですね。
ツキ:本当ですか?そこ褒められるのは嬉しいです!これは、全員やったほうが良いと思います!おすすめです。
―絶対に記事に残しますね(笑)あとはどんな条件があったんですか?
まさき:4つ目が、入籍するなら4月1日のエイプリルフールにしてほしい、と。
ツキ:まあ近かったしね。
まさき:でも理由が、離婚しても、「もともと結婚したのが嘘でした」ってなるからと。
ツキ:そんなことはない(笑)まさきは毎回そう言うけど。
まさき:でも僕言われたんです。面白いからって。
ツキ:まあ面白いっていうのはあったけど。結婚する流れだったから、「友達と一緒の日にしよう。」「うけるから4月1日にしよう。」って言ったら、まさきもいいねってなって、「それならいいよ。」となったのが本当のところ。でも、苗字のこともそうだけど、離婚をしても楽だなとか、離婚は常に視野に入っているところだったから。
ツキ:私がどちらかと言うと、結婚願望がなかったから、真面目に指輪を渡されてプロポーズされたり、急に周りが踊りだしたりされたら、イヤ無理だわって(笑)ノリな感じにしてもらわないと結婚するとはなれなかった。
■子どものことは話し合いの連続…
それでも答えは出なかった
―ツキさんは、結婚願望はない中で、お子さんのこともあまり考えてはなかったんですか?
ツキ:子どもはなんとなくほしいと思っていました。どういう形でというのは考えてなかったけど、例えば40とか50とかになって「あのとき子ども産んどけばよかったな」と思うのがイヤだった。どうしても子どもがほしいという感じではなかったけど、後悔はしたくなくてトライしてみることは必要かなと思っていた。
―まさきさんはどうでしたか。
まさき:僕はずっと家庭というもの、自分だけの家族というものに憧れがあって、子どもはほしかったです。
―そこは二人の意見は合致していたんですね。
ツキ:そうですね、私の年齢もあったし
―ツキさんは、まさきさんの6歳年上なんですよね。早く動かなきゃなという感じだったんですね。
ツキ:37歳で産もうと思っていたからそこまで焦ってはいなくて。そろそろ思っている年齢がきたなという感じでした。
―ドナーはごきょうだいだったんですよね。ごきょうだい以外の選択肢は検討されたんですか。
まさき:子どもは二人とも、僕の兄に精子提供をお願いしました。ドナーをどうするかは毎日話し合ったよね。
ツキ:うん、何人か候補はいたんだけど。
まさき:選択肢は、きょうだいからもらうか、他人の第三者からもらうか、もしくは養子をもらうか、作らないか、の4択で、毎日どうするか話し合った。でも毎日話すと、その順位が変わるんですよね。話し合っているだけで、どんどん月日が経って、決まらなかったんですよね。
―どれぐらい話し合ったんですか?
まさき:どれぐらいだろう?
ツキ:ん-でもそんなでもないかも。1か月くらいかな。
まさき:時間も限られていたし、その中で最短でトライできる方法というので、近くに住んでいる兄に相談してみようとなった。話をしてみたら、OKをもらえたのでって言う感じですね。
ツキ:もともと、まさきの第一希望はお兄ちゃんだったんだよね。だけど昔断れたことがあったから相談しづらくなっていて。
まさき:そうなんです。結婚する前、付き合っていた彼女がいたときに、一度兄に相談したときがあったけど断られちゃって。「本気度が見えない。お前が勢いで言っているだけに聞こえる。」と。そのとき結婚もしていなかったので。だから諦めていたんですけど、今回はちゃんと結婚もしていて、色々な人から話も聞いていた。こういう子どもの作り方で、協力をしてもらう方法はこれとこれとで、この日こういう感じに時間を拘束する感じになりますというのとかを、けっこう具体的にプレゼンしたんですよ。それで本気度が分かったからと、OKしてもらえたんですよね。
―お兄さんの考え方も素敵ですね。
まさき:理想論は語らない、現実的に考える人ですね。
■交際2か月のスピード結婚、結婚からお子さんが生まれるまで1年。行動と決断が何かと早いお二人。お子さんが生まれてからはどんな変化があったのでしょうか?
後編では、周囲の反応や1人目のお子さんが生まれてからの変化、お子さんへの真実告知、お子さんに対する想いなどをお伺いします。