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支え合う、フレキシブルな「かぞく」。『ふたりぱぱ』みっつんさんに聞く「かぞく」のこれから。(後編)


こんにちは!Love Makes Family編集部の光です。

既存のかぞくの形に囚われない、新たな生き方のヒントを発信する次世代WEBマガジン『Love Makes Family』、第8回目の連載です。
第8回目となる今回は、スウェーデン人の夫と共にスウェーデンで子育てをしているゲイファザー、みっつんさんへのインタビュー後編をお送りします!

前編では、大人気YouTubeチャンネル『ふたりぱぱ』の運営によってできたコミュニティ、みっつんさんが考える「かぞく」、また2019年に出版した書籍についてや、みっつんさんが今後やってみたいことなどを伺いました。
後編では、みっつんさんが「コアなかぞく」と形容する夫「リカさん」と息子「息子くん」との生活に焦点を当て、スウェーデンでの子育てやLGBTQファミリーの法的な位置付けについて、書籍のテーマともなったサロガシー(代理母出産)に関して、子育てを考える日本のLGBTQに対する思いなどについてお話を伺っていきます!


【みっつんさん PROFILE】
1980年名古屋市生まれ。スウェーデン・ルレオ在住。
2008年に東京でスウェーデン人の現在の夫と出会い、’11年にスウェーデンの法律の下、同性結婚。同年、東京からロンドンへ移住。2016年サロガシー(代理母出産)により男児を授かったのを機に、夫の出身地であるルレオに移住。2015年開設したブログ「ふたりぱぱ」が話題になり2019年に書籍化。2020年春から本格的に始めたYouTubeチャンネル「ふたりぱぱ」も大きな反響を呼び、チャンネル登録者数は約10万人(2021年2月現在)。LGBTQや育児というテーマを軸に、スウェーデンの文化と共に発信を続けている。

■詳しくはこちら
Blog「ふたりぱぱ」: futaripapa.com
YouTube「ふたりぱぱ」: https://www.youtube.com/channel/UCU69jxPesoWw5I4WmOMBx-Q?view_as=subscriber
facebook: https://www.facebook.com/futaripapa/
Twitter: https://twitter.com/MittsunLondon
Instagram: https://www.instagram.com/mittsuntyoldnlla/
著書 「ふたりぱぱ:ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る」
https://www.amazon.co.jp/dp/4768458629/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_NsO1Eb0JGY93F


■ジェンダー平等の超先進国、スウェーデンでのLGBTQの子育て。


―みっつんさんは現在、夫のリカさんと共に、北スウェーデンで子育てをされていますが、スウェーデンにおけるLGBTQファミリーの法的な位置付けについて教えてください。

みっつん:
スウェーデンでは、2009年に同性婚を認める法律が制定される前から、同性間での養育は法的に認められていて、同性パートナーの双方が親権や養育権を持つことができるんです。子どもの父親、母親の認定は、子どもの出自に合わせて、裁判所がその都度対応してくれます。
生殖補助医療に関しても、異性カップル、同性カップルの区別なく、1人目の子どもを得るための生殖補助医療は保険の適用対象になります。女性カップルが体外受精を受ける場合も、もちろん保険適用対象です。

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―婚姻、生殖補助医療、養育権のいずれも、同性カップルと異性カップルは区別されないんですね。

みっつん:
そう言えます。ただ、子どもを持ちたいゲイカップルにとっては、難しい点もたくさんあって。
例えば、サロガシーで子どもを持ちたいと考えた場合、スウェーデンにはサロガシーやサロゲートマザー(代理母)に関する法律が存在していないので、禁止はされていないけれど、支援も受けられないんです。
里親や養子縁組を検討した場合、共同親権はもちろん問題ないのですが、スウェーデンでは堕胎が女性の権利として認められていたり、他の国に比べて社会福祉が充実していたりする関係で、里子や養子の対象となる子どもの数が少なくて、マッチングに至るまでが事実上困難なんですよね。
国際養子縁組という選択肢もあるけれど、子どもの国籍によっては同性パートナーによる養育が認められない場合もあって。
養子の対象となる子どもが多くて、養子縁組を仲介するエージェンシーもたくさんあるアメリカとは違って、スウェーデンの場合、里親や養子で子どもを授かるハードルは高いです。


―スウェーデンではサロガシーに関する法律がないということですが、傾向として、スウェーデンの人々はサロガシーをどのように捉えていると感じますか?

みっつん:
スウェーデンではジェンダーの平等がすごく大切にされているので、ジェンダーを問わず子どもを持てるようにするためには、サロガシーは当然認められなければならないという認識が社会全体に浸透していると感じます。メディアでも、サロガシーで子どもを授かったファミリーが、フラットな語り口でよく紹介されています。
一方で、サロガシーは女性の権利を侵すものというイメージも依然として存在しています。だから、一定の理解は得られているけれど、深い議論は避けられがちな傾向があると思います。

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―ジェンダー平等の意識がそこまで浸透しているとは驚きです。日本ではまだまだサロガシーに対する認識が進んでいない状況にあると思いますが、日本の現状に対してどう思いますか?

みっつん:
日本では確かにまだまだ認識が進んでいないけど、日本には日本の良さがあるし、日本とスウェーデンは社会の土台が違うので、スウェーデンのやり方をそのままコピーしても、うまくいかないと思うんです。
自分は、時間はかかっているけれど、日本も着実に前に進んでいると思っています。日本は色々な国の良いところを取り入れてアレンジするのが得意な国だと思うので、色んな国の先例を取り入れて、日本独自の形を作っていけばいいんじゃないかなと感じます。自分もYouTubeを通して、多様なかぞくの形を日本に伝えていければいいなと思っています。

■色んなかぞくがあることは当たり前。北スウェーデンでの子育て。

―今、みっつんさんは北スウェーデンで子育てをされていますが、身の回りにゲイのパパ友はいらっしゃいますか?

みっつん:
レズビアンのママ友はいるんですが、ゲイのパパ友はいないです。自分が住んでいるのは人口7万5000人程度の小さな町で、そもそもゲイがすごく少ない。これはどこの国でも言えることですが、ゲイは都会に集まる傾向があるんです。

―日本でも、地方ではLGBTQファミリーが繋がりを持ちにくい傾向がありますが、スウェーデンの地方都市で子育てをするにあたって困ったことはないですか?

みっつん:
特に困ったことはないですね。確かに身の回りにLGBTQファミリーは少ないけれど、スウェーデンでは子どもにすごく人気がある国民的アニメに同性カップルのキャラクターが出てきたり、息子が通っている幼稚園にも男性同士がキスしている写真が飾られていたりと、子どもたちが育っていく中で、自然とダイバーシティを理解できるようになっています。
実際、息子の通っている幼稚園でも、両親が2人とも男性であることで好奇の目で見られたり、理解が得にくかったりすることは一切なくて、かぞくのひとつの形として認識されていると感じます。

―スウェーデンでは子どもが幼い時からダイバーシティを理解できる環境があるのですね。みっつんさんは今、息子さんに出自のことをどのように伝えていますか。

みっつん:
今、息子は5歳なんですが、もう「赤ちゃんはママから生まれる」くらいのことはなんとなくわかっているんです。だから、少しずつ出自について伝え始めています。
自分たちは、息子のサロゲートマザーのステファニーとずっと連絡を取り合っているんですが、最近、ステファニーが受精卵、妊娠、出産と、息子が生まれるまでの経過をまとめたアルバムをプレゼントしてくれました。こういったプレゼントも用いながら、息子は多くの人に望まれて生まれきた大切なギフトであることを理解してもらいたいと思っています。
実は、息子が生まれる前、体外受精を扱うクリニックでカウンセリングを受けている段階から、出自を伝えることは決めていました。そのカウンセリングで、子どもに出自を伝えたいかどうかと問われて、「出自を知ることは子どもにとって大切な権利だから、伝えるつもりだ。」と答えたら、クリニックから、子どもの年齢に応じて伝えるようにアドバイスをされました。その時から、段階に応じて出自を伝える心積もりはしていたんです。

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■子どもを持つことを後押しした言葉。子どもを持ちたいと考えるLGBTQの人たちへ。

―前編で、ロンドンのワークショップについてのお話が出ましたが、そのワークショップに参加したことが、当時、子どもを持つかどうか迷っていたみっつんさんの背中を後押ししたそうですね。具体的にどんな出来事が印象に残っていますか?

みっつん:
ロンドンは多文化主義で、かぞくやパートナシップの形も様々なんですが、ワークショップに参加していたある女性が、ゲイであるということを知りながら、何の気なしに「あなたたちは子どもはどうするの?」って聞いてきたんです。
その女性に、「持ってみたいとは思うけど、ゲイカップルだから不安を感じている。」と伝えたら、「そんなの関係ないわよ。子育ては、親になってから子どもに教えてもらうもの。」、「完璧な親なんていないんだし。」って言われて。
自分はその女性の子どもと何度も遊んだことがあったんだけど、彼女は自分が子どもと触れ合う様子を間近で見た上で、「あなたは大丈夫。」と言ってくれたので、すごく堂々とすることができて、自信が持てました。その言葉が、子どもを持とうという決心の拠り所になったと感じています。

―LGBTQが子どもを持つためには、時として非常に長く、苦しい準備期間を経る必要があります。心身両面の様々な準備を経て、今、子育てを行っている先輩ファザーとして、準備期間の最中にいる日本のLGBTQになにかメッセージをいただけますか?

みっつん:
これは自分が、当時すでに子育てをしていたリカの妹の旦那さんに言われたことなんですけど、まずは何より「本当にこっち側にくんの?」と言いたいです(笑)。
その当時、彼の子どもは5、6歳だったんですが、彼は「子育ては本当に大変だよ。本当にこっち側にくんの?」と半分冗談、半分本気で言っていました。実際に子育てをしてみて、本当に子育ては大変だとわかりました(笑)。彼の言葉の意味が身に染みてわかるから、今度は自分がその言葉を投げかけたいです。
でも同時に、それだけ大変な準備期間を過ごしてきたんだから、絶対大丈夫だよとも伝えたいです。苦労して迎えた分だけ、子どものことを一層愛おしく大切に思うはずだし、たくさんの苦労を経たということは、言い換えれば、その子がたくさんの人に支えてもらって、望まれて生まれてきたということ。
だから大変だけれど、その価値はあると言いたいです。準備期間は大変ですが、大変な方がいい。
でも自分は、大変な思いをして子どもを授かったということを、将来子どもに無理矢理説くようなことはしたくないと思っています。本人が知りたいのであれば何でも言うけれど、子どもを持つことは自分たちが選択したことですから。

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かぞくは、フレキシブルなものと語るみっつんさん。そのかぞくの核には、お互いに支え合う心がありました。北スウェーデンでの子育てや、YouTubeチャンネル『ふたりぱぱ』の発信活動を通じて、今後ますます多くの人が、みっつんさんのかぞくの輪に加わるのかもしれません。


今、あなたを支えてくれている人へ勇気を出してかぞくと呼んでみた時、世界の見え方が少し変わるのかもしれません。


あなたにとって、「かぞく」とはなんですか?





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ラブメイクスファミリー編集部
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