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人生の舵を取る

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エリカさんプロフィール
世田谷区在住。アメリカ、カリフォルニア州に生まれ日本で育つ。
女性のパートナーと交際をしていた20代の時に、仕事関係の知人から精子提供を受け子どもを出産。子どもは現在7歳。
その後、当時のパートナーと別れ、現在は別の女性パートナーと米国で結婚し日本で暮らしている。
パートナーは、現在出産間近。

 パートナーと別れてシングルマザーとなったエリカさん。
 幸いなことに助けてくれる人が周りにいた。


 エリカ「恵まれていたのは仲のいいママ友が近くに住んでいたり、保育園のママたちと良い関係が築けていたことですね。息子を預かってもらったり、私の帰りが遅くなる時は一緒にお迎えに行ってもらったり、ファミリーサポート(※)などを使ったりして周囲に頼っていました。
 最初は元パートナーとも良好な関係だったので、朝の送り迎えをお願いしていたこともありました。
 今のパートナーはその当時から友達で、色々大変なのを見て手伝ってくれたりもしていました。」

※ファミリーサポート
ファミリーサポートは、地域において育児や介護の援助を受けたい人と行いたい人が会員となり、育児や介護について助け合う相互援助活動


 現在のパートナーには、その頃別のパートナーがいた。エリカさんも、元パートナーと別れる前は4人でご飯を食べたこともあった。


 エリカ「私は何か1つのことを話し合うとなると、とことん話し合いたいタイプで、前のパートナーともそれができなかったんですけれど、今まで付き合ってきた人でそれができる人って1人もいなかったんです。
 例えば選挙ひとつとっても、討論できる相手がいなかったけれど、彼女(現在のパートナー)も結構しつこいんですよ(笑)。 そういう、とことん話ができるっていうのが私の中で心地いいです。それに、すごく息子のことを可愛いって思ってくれているし、自分が手一杯な時も息子の相手をしてくれて、例えばお尻を拭くとか、親じゃないとできないようなそういうことも嫌がらずしてくれる人で、そういう部分に惹かれていきました。
 彼女自身も妊活をしていたけれど、生む側と生まない側の温度差というか、それがすごくあった時期みたいで、色々話し合いをしてあちらは別れてしまって、それぞれの別れのタイミングが重なって一緒に話す時間も増えたんです。」

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 惹かれたと言っても、子どもがいる前と後の恋愛観は変わっていたため、お互い精神的にも物理的にもメリットがあるかということはすごく考えた。 他の人には特殊に聞こえるかもしれないが、「ずっと一緒にいることにはこだわらない」というところで2人の意見は合致している。


 エリカ「1回自分たちも生涯一緒にいようという人と別れていて、無理に一緒にいるとうまくいかないことを経験したんですね。これは初めによく話したし、今でもたまに結婚観を話した時に出るんですけれど、無理にずっと一緒に過ごす必要はない、パートナーという関係性を一時的にグレーにしてちょっと離れて戻ってもいいんじゃないか、ということです。
 お互いプレッシャーにならない一緒の過ごし方を重視したいと思っています。


 子どもがいるからという理由で無理に一緒にいると、生じているズレに対して向き合えないまま一緒にいることになるから、結構後で大きくヒビが入ることになるんですよ。
 だから離れたい時にちょっと距離を置けるというか、ずっと一緒にいたいという思いが前提にあって、例えば修復できない関係性になる前に話し合って別居してみるとか、そうするかしないかは別として、してもいいんだということだけでも心のゆとりが出ますよね。修復不可能になる前に対策をしたい、そう考えるとちょっと離れて過ごすくらいどうってことないかなと。
 家庭の中で無理をして一緒に過ごしている親を見るよりも、子どもにとってもいい関係が続けられるんじゃないかと思います。


 もちろん、これはお互いに信頼していないとできません。良い関係を続けるために建設的な話し合いが必要ですが、長い人生を考えるとそうできない事もあるかもしれない。そういう時のオプションです。親の都合で環境を変える時には、息子にはしっかり説明をします。息子がどちらと住むかなどはそのライフスタイルに合わせて選べばいいですが、かぞく皆で過ごす時間を一部剥奪される訳ですから。」


 エリカさんは19歳の時、実の父親が海外にいることを知った。
 母親が再婚だったことも知らず、自身のアイデンティティが大きく変わった。

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 エリカ「私自身が経験したように、私にとってかぞくは血の繋がりではないと思っています。
かぞくっていうのは一緒に人生を楽しんでいる者同士がかぞくだと思うから、その中で子どもを育てていれば、子どもにとってのかぞくは血の繋がりがなくても親だし、それは前のパートナーでも実感しました。
 でもかぞくっていうのは絆で結ばれるけれど、別々になることもあるというのは息子と前のパートナーがそうだと思います。

 例えば、片方の親が子育てがもう無理かなと思って、そこで 1回パートナー関係を解消しても、その子どもにとっては、親であることには変わりないんですよね。心ではずっと繋がっているし、その子ども自身が感じてきた愛情は絶対だから、離れても心で自分を支え続けるのもかぞくかなと思います。」


 一方、今のパートナーと子どもは、初めは友達のようだった。
 パートナーとエリカさんが同じことをするので、親なんだと言う自覚が子どもに少しずつ出てきた。


 エリカ「親になるプロセスってすごく時間が必要だし、特に赤ちゃんの時から見ていないので、まず息子自身を知るっていうところでおそらく何回も失敗すると思うんです。
 私も感情的に、「ちょっとそういう言い方はしないでほしい」とか言っちゃうことも多々あったんですけれど、その都度話し合いをしていますが「自分はこう思って対応したのに」っていう主張がお互いあったりしました。そんな時は、こう対処した方が響くと思うとか、できるだけヒントになるような事例や、今までの私の成功例とかを話していました。そうしないと彼女も、自分だけ疎外感を感じたりするようなので、気を付けています。
 特に何か気になることがあれば、2人になった時に話すようにしています。

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 思えば息子の取扱説明書じゃないですけれど、小さい時にどんな子どもだったかというのは、じっくり時間をかけて説明した方が良かったかなと思います。今、息子が赤ちゃんだった頃の写真を見返してこの時ああだったこうだったという機会が多いんですけれど、パートナーの中で共有することで今の息子と繋がっている感じがするので、そういうのがあった方がいいのかなって今は思います。」


 出産を間近に控えたエリカさんのパートナー。
 パートナーは本当はもう少し早い妊娠を望んでいたものの、今の新しい生活に慣れて、息子自身が自分も兄妹が欲しいと待ち望めるようになってから妊娠できたことは、順を追って、子どもの気持ちに寄り添えたのではないかと、エリカさんは思っている。



 エリカ「これから生まれる子にも、息子と同じようにその時のベストな対応や選択をしながら子育てしたいと思っています。2人目は手薄になるっていう話も聞くのでそうならないように努力したい、そのことはパートナーにも伝えています。
 生まれたその瞬間から24時間子育てするっていうのは、息子の時はできなかった事なので、無事に生まれてきてくれたら、新生児を家で見ることがとても楽しみです。
 彼女は早めに仕事に復帰したいみたいなので、私が今年の3月で仕事を退職し、自分がやりたかったことに時間をとりつつ、子育てをメインでしていく予定です。」

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これから子どもを欲しいと思っている人へのメッセージを聞いた。


 エリカ「今はたくさんの情報があります。自分たちにとって子育てしやすい街や自治体を選ぶこともできる。今後のかぞくに対する将来計画を練って、パートナーとたくさん話し合いをして実現していってほしいと思います。
 一緒にいたいと思う人と、どんな環境下でどんな子育てがしたいのか、人生の中でお2人が望んでいることは何かを明確にして、ぜひ前向きに道を開いていってください。子どもを持つまでにたくさんの苦労があるかもしれませんが、子どもと過ごす時間は喜びに満ち溢れています。


 毎日が本当にとっても楽しいです!親が子どもに教えることよりも、子どもから教わることの方がはるかに多いですし、自分自身を見つめ直す機会になっています。パパ・ママ家庭とは異なる形のかぞくは、まだまだ日本では少ないのかもしれません。けれど、忘れないでほしいのは、子どもにとってかぞくの形というのはアイデンティティの一部に過ぎないということです。どんなかぞくでも、愛情に勝るものはありません。ぜひ、自分が求めるかぞくの形に自信と誇りをもって、子どもに接していってください。周囲との『違い』を越えることは、案外難しいことではないのです。子どもが成し遂げてしまうことなのですから。
 楽しいですよ!子育ては。」


最後に、エリカさんにとってかぞくとは何かを聞いた。


 エリカ「『愛を知る場所』です。
 子どもが初めて愛に触れるのが家庭やかぞくであってほしい。そして親は子どもから無償の愛を知ります。それがどんどん周囲に広がって、近隣の人への優しさや自分のかぞくの愛を知る機会になる。愛の連鎖の最初がかぞくなのかな。」



 自分の心に耳を澄ませ、ひたすらに向き合い、自分のため、子どものため、かぞくのため、何がベストかを考え続けるエリカさん。

 勇気がいる決断も、その先に何があっても、また考えて乗り越えて行く覚悟があるからできる。

 目指す場所があるからこそ、自分の人生の舵は自分で切る。
 新しいかぞくを迎えることを心から楽しみに、また新しい場所への航海を始めている。

かぞくって何ですか


※先日無事に赤ちゃん産まれました!!

エリカさん


書いた人

一般社団法人こどまっぷとは.. 「子どもが欲しい」また「子どもを育てている」
LGBTQの方々や、応援する仲間たちを 繋げる非営利型の一般社団法人です。
日本に限らず世界のメンバーとの情報交換や交流会を行ったり、日本全国で交流をするための場所を創っていくことを一つの目標としています。
また、各ライフステージで必要となる専門家を紹介したり、絵本を出版したり、親だけではなく子どもたちの繋がりをサポートし、 LGBTQのかぞくがより住みやすい社会を目指して、当事者を中心に活動を広げています。https://kodomap.org



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ラブメイクスファミリー編集部
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