ヨークシャテリアのレインとの時間
ブリーダー引退犬4匹を迎え入れ、4年目になる。
トイプードル、ポメラニアン、パピヨン、ヨークシャテリア
劣悪な子犬製造工場、人間なら戦時中の捕虜収容所みたいな環境下で、
生産しないからいらない子
といわれ全員うちが引き取った4匹の、一番小さくて一番自己中の強メンタル娘のヨークシャテリアについて記したい。
ブリーダーさんからは、4匹の中では若くていつも吠えている落ち着きのない子、東北から他のブリーダーさんが連れてきた子
と聞いていて、
うちに来てからも、性格はその通りだった。
他のトイプードルやパピヨンが人に飛びかかってくる中、
彼女はその周りを、人間から目を離さずぐるぐるひたすら回る。
グレーの毛色から雨の日を連想して
レインと名付けた。
レインは自我が強い。他の犬に唸られても威嚇されても、人間の周りをぐるぐる回り、
人間の手が近づくとベターっと床に全身を伏せる。
構ってほしくて回っているのに、いざ撫でようとすると、床にあごをつけて、視線を外す。
怖いのだ。
人間に撫でてもらった経験がないと手が近づくだけで怖いらしい。
だけど、構ってはもらいたい。
怖がるレインを撫でると
伏せたままあごを上げ、目をうっとりさせる。
撫でて欲しかったんだ。怖いけど。
そのまま抱きしめ抱えると、
ものすごい勢いで逃げていく。
その状態が1年ほど。
少しづつ抱っこできる時間は伸びていったが、
膝の上でリラックスすることはないようだ。
そのくせ人間が部屋から出ると、一番激しく吠える。
チビのくせにうるさい。
人間が部屋に戻ったとたんに
床に伏せる。
撫でてください。なのか、
吠えたこと怒らないで。なのか
わからないけどとりあえず抱き抱え、膝の上で撫でる。
うっとりしている。
寂しかったよ。なのかもしれない。
いつも多動で、一番吠えて、
ご飯に貪りつく様も一番激しい。
勢いあまって喉につかえて、
早食べ防止食器に変更。
ソファの上では人間の膝の上をジャンプして飛び越えていったり、
人間の太ももとソファの肘掛けの間に
強引に体をねじ込ませて人間と他の犬をどかし、
ソファの隅っこを陣取る。
図々しいおばちゃんの如く。
ちなみにうちの4匹はみんな
ソファの端がお気に入り。
そのため争奪戦が毎回行われる。
しかし、他の子にどんなに唸られても襲われても、
人間が仲介に入り守ってもらえることを知っているので、
涼しい顔で横取りする。
私の場所ですけど…みたいな顔で。
トイレの失敗も一番多かった。
少し目を離すと食糞もした。
うちに来て2年目。
下痢が続き腹水が溜まった。
腸の病気だった。
療法食、ササミ、ご飯、ステロイド剤を一生続けることになった。
下痢は良くなったが便は緩く
排泄のたびにお尻を拭き、
薬のせいで水を多く飲み、頻尿で失敗の回数は凄まじかった。
トイレの始末をしながら
ほんとにレインはもう!
と何度も口から出ていたが、本人は我関せず、床にべたっとする。
お散歩に出ると別犬だった。
人間の隣りを常にキープし、ちらちら目配せしながら歩く。
お散歩だけは一番優秀でリードを引っ張ることはなかった。
2週間前から、
ご飯の食べ方が品が良くなった。
ぐるぐる回ったりせずソファで寝そべる時間が多くなった。
加齢のせいかとも思ったが、
病院に行くと腎臓の値が低かった。炎症値も高い。
皮下点滴で様子を見た。
でも元気はない。
だんだんご飯を食べなくなり、また病院へ行く。
今度は入院になった。注射と点滴をしてご飯を食べられるようになったので次の日に退院できた。
だか、やはり寝てばかりいる。
水下痢だった。
口内に違和感があるようなので
ふやかして離乳食のような形状にした。
なんとか舐めている。
力なくよろよろとトイレに行く。
撫でると、背中は骨ばって来ている。
どうやら時間が限られてきたようだ。入院したら点滴で少しでも長生きできるかもしれない。
でも面会時間にも制限がある。
長く一緒にいたい。
触っていたい。
いつもと変わらない環境で、
レイン、と呼んでいたい。
離れたくない。
レインに似たのか、私もわがままになったようだ。
推定年齢は10歳を超えている。
うちに来て10月で丸4年。
人間なら10年以上闘病生活を送った。
わがままで自己中でレインらしく最後まで過ごして欲しい。
人生の半分を
寒くて、汚くて、愛のない場所で転々とし、うちに選ばれて来た子なのだ。
私の覚悟はまだできていないけど、
残りの小さな命を精一杯、
私の隣で燃やし続けて欲しい。
最後まで読んでくださりありがとうございました。