
2024年12月 おおさき日本語学校開校に向けて フィールドワーク
この記事では、2024年12月のフィールドワークの記録と2025年1月の「河北新報」朝刊社説記事を紹介します。
2024年12月のフィールドワーク
大崎市役所による「多文化共生」の啓発
2024年12月26日、大崎市のウェブサイトで「多文化共生の推進について」というページがアップされました。2024年度の多文化共生推進事業の実施についてまとめられています。この中で述べられている事業のうち、私は「2.東川町立日本語学校先進地視察」「3. 多文化共生理解講座」「5. おおさき多文化共生シンポジウム2024の開催」に参加させていただきました。 「2.東川町立日本語学校先進地視察」と「5. おおさき多文化共生シンポジウム2024の開催」については、以前noteで報告させていただきました。
「7. 多文化共生啓発」の中に「大崎市図書館での多文化共生PR」というものがあります。2024年12月14日(土)に大崎市図書館を訪れ、どのような展示がなされているかをウォッチングしてきました。図書館の一角に展示コーナーが設けられていて、外国人住民との共生について理解を深める書籍の紹介や、大崎市の外国籍住民の数や現状のデータ、留学生の出身地域紹介、多文化共生のために私たちができることについて考えるきっかけとなる資料が展示されていました。


大崎市内の高校生が進めている「多文化共生」に関する探究学習
2024年12月6日、大崎市内の高校3校を訪問し、高校生が進めている「多文化共生」をテーマとした探究学習の様子について聞き取り調査を行いました。まさに「対話し、知恵を出し合い、外国人とともに生きる社会を目指す」ための探究学習が進められていると感じました。もちろん、探究学習のテーマの選択は生徒たちが行っていますが、大崎市に公立日本語学校ができるということで、関心を持ってこのテーマを選んでいる生徒たちが多くいるようです。現在、大崎市で働いている外国人住民の方の職場を訪れたり、大崎市の多文化共生担当職員の方をアドバイザーに迎えて、調査活動を進めたり、留学生にも使用してもらえるリソースの開発に取り組んだり、興味深い取り組みが行われています。近々、実際にこうした探究学習に取り組んだ高校生の声も聴いてみたいと思います。
多文化共生理解講座
大崎市では4月の日本語学校開校に向けて、地域住民への説明会や多文化共生理解講座の開催を進めてきました。日本語学校が開校する西古川地区や、学生寮ができる中里地区、12月14日(土)には大崎市役所においても「多文化共生理解講座」が開催されました。

講座には、多文化共生をテーマとした探究学習に取り組んでいる高校生も数名参加していました。幅広い年代の方が参加している印象で、「なかなかこのような機会がないから」と少し遠方から参加している方もいるようでした。おおさき日本語学校が迎えるのは、インドネシア、ベトナム、台湾の留学生です。この3つの地域からの留学生がこの講座の講師となり、地域の文化や母語の挨拶など、盛り沢山のレクチャーがありました。休憩時間には、3つの地域で人気のある飲み物が振舞われ、講師の方々と直接お話をしながら交流することもできました。

同日、ほぼ同時間に大崎市役所近くの施設では、この地域のボランティア日本語教室である、「おおさき日本語教室」(代表:鈴木裕子氏)が料理交流会を開催していました。地域の日本語教室は通常土曜日に、吉野作造記念館で主に生活者としての外国人住民や外国人児童生徒の支援を行っていますが、この日は特別イベントとして母国の料理を振舞う料理交流会が行われていたようです。
2025年4月の開校に向けてのメディア報道
2025年がスタートしました。宮城県に本社がある新聞社、河北新報の1月3日の社説は「外国人との共生~対話重ね開かれた社会に~」というテーマの内容でした。この中で、この春開校が決まった宮城県大崎市の市立おおさき日本語学校のことが取り上げられています。その箇所を引用します。
この春、宮城県大崎市に市立おおさき日本語学校が開校する。台湾、ベトナム、インドネシアから入学生を迎え、地域の風土や文化を学ぶプログラムや地元の住民や小中学生との交流もあるという。 県も財政面や留学生募集、教員確保などをサポートする。村井嘉浩知事は、市との覚書締結式で「労働力を増やす教育ではなく、民間にはできない地域に根差した教育」への期待を語った。「選ばれる地域づくり」に不可欠な視点だろう。 住民説明会では不安の声も出たという。異なる文化を持つ人々だ。行き違いや衝突も起こり得る。課題をどう乗り越えるかも含め、同校の実践に大いに注目したい。
「課題をどう乗り越えるかも含め、同校の実践に大いに注目」しているのは筆者も同じです。おそらく、多くの行政関係者、日本語教育関係者が注目していることでしょう。おおさき日本語学校は開校前ではありますが、既に多くの自治体から視察が来ているそうです。
この社説は最後に「対話し、知恵を出し合い、外国人とともに生きる社会を目指そう」という文で締めくくられています。地域の隣人として、ともに社会を創る地域の仲間として迎え入れるために、私たちができることはどんなことかを問いかけるような社説が、2025年の年初に掲載されたことの意味の大きさを私は感じています。
この社説の記事全文は、河北新報オンラインで読むことができます。ぜひお読みいただければと思います(有料記事です。無料会員登録をすると、一日一本記事が読めます)。