1級建築施工管理技士 2次試験「解体工事 経験記述」
はじめに
こんにちは、私は解体工事の現場監督をしています。
令和3年に一級建築施工管理技士を取得しましたが、受験の際に解体工事にまつわる経験記述の模範解答例を見つけ出すのに苦労しました。たくさんの参考書の中から解体工事に関わる経験記述を抜粋して集めましたので、同じように苦労されている方がいれば、参考にしてください
私が読んだテキストの中には「解体工事は書かない方が良い」とまで記載されているものもありましたので、一般財団法人建設業振興基金に「解体工事を経験記述にして問題はないか」問い合わせ確認しました。試験では解体工事の経験記述を記載して、合格をしています。
平成28年6月1日(改正建設業法施工日)から、「とび・土工工事業」に含まれている「工作物の解体」を独立させ建設業に係る業種区分として「解体工事業」が追加されています。
総合解体工事で実際に施工に携わりました、7階建てのSRC造の事務所・マンションになります。通常は建築する建物の概要を記載するのですが、解体工事ですので、記載内容は解体申請建物の概要となりました。
千代田区××町(×××ビル)既存建物解体工事
東京都千代田区××町 1-2-3
事務所 居宅
解体工事 杭抜き工事 アスベスト除去工事
延べ面積 1265㎡
外装 モルタル壁スタッコ仕上げ
内装 石膏ボード張り軽量鉄骨下地
現場代理人
工期 令和2年××月××日~令和2年××月××日
建築副産物
建設副産物の模範解答になります。建築廃棄物が大量に発生する解体工事の特性上、再生利用は考えやすいと思います。
総合解体工事なので、工程の序盤にある内装解体による、「木くず」「廃プラスチック類」「ガラスくず」の分別、重機による躯体の解体が始まってからの、小割選別による「コンクリートくず」「金属くず」に焦点をあて作成しました。
適正処理の模範解答では、工事着手前に行う調査によって有無が確認される、アスベスト、PCB、フロンがしかるべき手順によって搬出されているかをセレクトしました。
【建築副産物1】
建物の駐車場を撤去する際は建物土間基礎まで解体した後、駐車場のアスファルト舗装をコンクリートくず、土砂と混合しないように剥がし、粉砕して再生アスファルト混合物として再生利用した
再生工場にて再生することができたとともに、一工程解体ごとに片付け整理を行うことで整然とした作業環境が構築され作業能率も向上した
【建築副産物2】
躯体解体を行う前に内装を先行して解体分別を行い、建築発生木材、建設混合廃棄物(ガラスくず、廃プラスチックくず等)有価物は(銅、鉄、ステンレス)などの10品目以上に選別を行った
多くの資材を分別回収することにより再生利用に貢献でき、その結果処理費用を大幅に削減できた
【建築副産物3】
躯体解体で発生したコンクリート塊をコンクリート圧砕機の小割を用いて鉄筋とコンクリートくずに分別し鉄筋を金属くずとして有償売却した
有筋のコンクリート塊を破砕することで再生砕石として再利用して、鉄筋は有価物として有償売却したので処分費用を大幅に削減できた
【適正処理1】
変圧器・コンデンサーの絶縁油
解体工事に伴い不要になった変圧器・コンデンサーの絶縁油にPCBの分析を行ったところ検出下限値の0.15㎎/㎏となり環境省のガイドライン0.5㎎/㎏以下であったため、通常の産業廃棄物(廃油)として処理した
【適正処理2】
吹付け材 廃アスベスト
解体工事に伴い石綿の有無について書面調査、現地調査を行ったところ、石綿含有の吹付け材があったため、特別管理産業破棄物管理責任者を設置し、大気汚染防止法、石綿障害予防規則に基づき最終処分に至るまで管理させた
【適正処理3】
解体工事において、耐火間仕切り壁に石綿含有ケイ酸カルシウム板第1種が使用されていたため、十分湿潤化し手作業でボルトや釘を撤去し破壊や破断を伴わない方法で取り外し、マニフェストに石綿含有産業廃棄物であることを明確にし、安定型処分場にて処分した
【適正処理4】
解体工事に伴い業務用のエアコンを処理する為、工事の発注者から委託確認書を貰い、フロン類の回収を充填回収業者に依頼してフロンを回収した
充填回収業社から引取証明書の写しを貰い3年間保存し破棄物リサイクル業者に廃棄する機器を引き渡すときには引取り証明書の写しを渡すことに留意した
合理化
合理化の模範解答になります。解体工事において、合理化は職方さん含めて皆が「工期短縮」「利益」のため常に考えていますが、
【内装解体時に廃材を階段で運ぶのが大変なので投下開口による投げ下ろしをした】
【階上解体の計画であったが、大型重機による解体の敷地が確保できたため、一面の足場を省略し、ロングアーム1.2㎥バックホウによる地上解体に計画を変更した】
といった内容を文面にしますと、より危険な作業をしているように感じられたので、私は避けました。
仮設計画とアスベスト作業の中から抜粋しました。
【合理化1】
階上解体での解体工事の養生足場において、高層部分の組立て作業は資材の運搬の面から効率が悪いため、階上解体で使用する重機揚重時に高層部分で使用する足場資材も共に上げる計画とした
材料の受け渡しのしやすさ、材料置場からの距離の近さにより運搬効率が良くなり、階上への重機揚重の工程と共に行うことで効率よく費用も抑えることができたため
屋上にあった室外機等を先行して撤去し、資材を置くスペースを確保した後、警察署の許可指導を得て、揚重作業を交通量の少ない夜間に行ったので品質管理に必要な良好な作業環境を保つことができた
【合理化2】
内装解体、アスベスト除去工事の工程が夏季になったので、建物一角を先行して内装解体、産業廃棄物搬出、清掃まで行った後、新たに机、椅子、スポットクーラー、送風機を用意し作業員休憩場所として使用した
涼しい環境の休憩所を作れば疲労回復、熱中症対策になり、作業能率向上につながるだけでなく、作業員が急に体調が悪くなった場合の休養室として使用できると考えたため
作業時間に疲労回復を促し、休憩場所を利用して進捗状況、周知事項等を知らせる工事用掲示板を設置し労働生産性が向上した
作業場所に近い事で体調次第で早めの休憩をとることでき、熱中症者を出さずに安全性を確保することができた
品質管理
品質管理の模範解答です。解体工事は申請建物が無くなります、検査が建物に対しておこなわれませんので、イメージがしにくいのですが。事前調査から杭の引き抜きまでおこなうと、品質を管理しなければならない場面はでてきます。
アスベスト、PCB等、有害な物質が暴露されないことを管理しなければ、近隣皆様方を不安にさせます。
杭の引き抜きにおいては、引き抜いた後の地盤が指示書のとおりになされていない場合。新設の杭を打設するのに弊害がでます。
杭穴に充填する流動化処理度土は指示書のとおりに施工されていても、新設の杭打設時が難航すると、建築業者からクレームがでたりするので、責任の所在を明確にするために、写真で管理することは重要です。
【品質管理1】
工種 アスベスト除去工事
要求された品質 アスベスト除去工事において石綿の飛散が無い事
品質管理目標 敷地境界における石綿粉塵濃度が1本/L超過の無い事
アスベスト除去工事において、除去作業中に養生からアスベストが飛散したり。除去し忘れや研磨残しのアスベストが躯体解体時に飛び散る等した場合に近隣住民が吸い込むと健康障害が生じるから
除去後の仕上げ面は除去作業の石綿作業主任者が除去し忘れ、研磨残しがないことを確認し、第三者の確認として作業環境測定を行い1本/L超過の無い事を確認した
(厚生労働省の作業環境基準 管理濃度 150本/L)品質管理
【品質管理2】
工種 杭抜き工事
要求された品質 杭抜き後の地盤沈下を抑制すること
品質管理項目 埋戻しに使われる流動化処理土のスランプ
杭穴に埋め戻される流動化処理土が品質管理基準値になかった場合、杭抜き後の孔壁が不安定になり地盤沈下が発生するから
流動化処理土のスランプフロー値を180mm~300mmの間とし比重は1.35~1.5の間とした
杭抜き工事の終わりに地盤の沈下量が30mm以下であることを確認した、第三者の確認作業として解体工事の完了後、家屋調査の事後調査を行い、隣地建物に影響が無い事を確認した
【品質管理3】
企業として品質の水準を明確にし、管理項目とそれに対する目標を定めたのち、一人一人の担当業務、責任、権限を文書にて確認し全員に周知する
各人の担当業務、責任権限を明確にすることで目標が得られ向上心を持つことができる、目標を達することができれば各人が技術者として成長したことを実感できる技術者が成長できれば会社が成長し社会的な評価も得られる
受験種別にかかわらない部分では、参考にしやすい文が多々あるとおもいます。
基本となることなので、胸に刻まなければならないと思いました。
【品質管理4】
企業として品質管理の方針を定め一人一人の担当業務を文書で確認する一定の工程完了ごとに作業工程の記録を社内にてチェックを行う、後戻り作業、手直しの無い工事の工程で引き継ぐ体系を構築することが必要である
施工者各人が組織の方向性を理解し与えられる業務が明確になることで向上意欲につながる経験を重ねれば技術者として成長できる、顧客の信頼が得られれば社会的な評価を高めることができる
【品質管理5】
施工要領書を作成させ品質管理活動に必要な担当業務、責任、権限を文書にして確認し朝会等にて周知した
一定の工程完了ごとに社内にてチェックを行い、後戻り作業、手直しがあった場合は作業工程を見直し原因を特定した
【補足】
「建築副産物」「施工の合理化」「品質管理」の出題は毎年変わりますので、自分が受験する年の出題傾向を調べておかなければなりません。YOUTUBEで丁寧に試験対策をレクチャーしてくれる方がたくさんいます。
私は1度目の受験は残念ながら不合格になりました。私は時間をかけて、いろいろ対策をしてきたつもりだったのですが、試験会場で答案用紙をみてビックリしたことがあります。
「あれ、、解答欄小さい、、」
2次試験の筆記の解答欄は、以外と小さいのです、解答は経験記述で40字から50字程度、その他で20字から30字程度で簡潔に書きます。
私は、持てるものを全て出そうとして、解答欄に小さい字で細かく長々と書いてしまいました。試験官は私の解答用紙を見た瞬間、バッテンしたかもしれません、、
残念な結果に終わり、とても悔しかったのを思い出します。参考書を読んでいるだけでは、解答欄が小さいことに気付けないので、補足しておきます。
以上になります。
施工管理業務は苦労が絶えず、まとまった時間をとるのが難しいかと思います
お役に立ちましたら、幸いです。
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