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仮想通貨「0xlsd」レビュー2025.2

2023年11月~2024年5月頃まで半年間、仮想通貨「0xlsd」張り付いていた。そのレビューまとめ。


結論「0xlsd」は詐欺でした。

結論、詐欺です。ただ、「0xlsd」が怪しいものであることは最初から分かっていた。「0xlsd」との出会いは、共通の友人を持つ知人Bからの勧誘だったが、知人Bは勧誘が下手だった。怪しさ満点の説明を聞き終わる前に、これは詐欺だと俺は確信していた。知人Bはすでにかなりの額を投資していたこともあり、「0xlsd」の動向が気になっていたのだ。

俺が最初に勧誘されたのは2023年11月。そして、2024年2月にはわずか3か月後に出金停止となった。2025年になっても運営側は「メンテナンス」とアナウンスを続けているが、これは詐欺罪で立件されないための「返済の意思があるアピール」に過ぎない。「0xlsd」が出金停止になると、LINEで『0xlsd被害者の会』がその日のうちに設立された。そこには、突然の出金停止に焦燥感を抱く人々が集まり、新たな詐欺案件や誹謗中傷が飛び交う魑魅魍魎の世界になっていった。詐欺師は、同じ手口に引っかかる被害者を繰り返し狙うのだという。

知人Bは「0xlsd」が出金停止になってからも、しばらくはまだ希望があると宗教のように妄信していた。仮想通貨投資詐欺の構造は「物無しマルチ」だ。マルチ商法特有の性質により、被害者であるか加害者であるかの線引きが曖昧になる。知人Bの妄信は、勧誘者から責めを受けないための演技だったのではないか、あるいは実は詐欺師側ではないかと、仲間内で噂が立っていた。当初の知人Bの勧誘手法には、「誰々も始めましたよ、ご家族も応援してくれるそうです」とLINEで連投するなどの特徴があった。被害者なのか加害者なのか分からないが、どちらにせよ普通ではない。

「勧誘された際に個人の銀行口座に日本円を振り込んだ人は金商法違反」

「0xlsd」が詐欺であると決定づけたのは、知人Bのある行動だった。早く始めた方が利益が出ると言い、「この(個人名の口座)に○○万円振り込んでください。○○万円分のUSDTをお渡ししますから」と誘導されたのだ。「0xlsd」がステーキングの先駆的な技術とアイデアの結集であると説明した後、唐突に個人の銀行口座への振り込みを求めてきた。怪しさは120点満点なだけでなく、この行為は法律違反だ。

金融商品取引業を、財務局の登録を受けずに無登録で営業した場合、罰則は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する、となっています(金融商品取引法第197条の2)。 また、法人・団体に対しては5億円以下の罰金が科されます(金融商品取引法第207条)。

「許可あるんですか?」と尋ねてはいないが、個人が登録できるものではない。

知人Bは法律に触れる行為を行っていた。そして、仮想通貨投資詐欺は、この1点を除けば法律で立件することが困難である。半年間追い続けた俺の感想は、「0xlsd」は驚くほど巧妙な詐欺だ。法に触れる唯一の部分は末端にやらせ、それ以外はグレーゾーンに留めている。仮想通貨という投資商品が存在するため、実態は「物無しマルチ」だが、「ねずみ講」には当たらない。投資商品としての実態は利益を生まず、末端の投資者が捻出した金で先行者の利回りを確定させている。破綻が明らかでも、運営側が「返済の意思がある」と言い張れば詐欺罪での立件は難しい。

① C to C(個人⇔個人)の取引は詐欺。
② 【高額利回り】と【紹介者利益】のセットは詐欺。
③ 仮想通貨購入の際に、個人の口座に日本円を振り込んだ人は金商法違反。 ④ 「0xlsd」は物無しマルチ。今も返済のアピールを継続中。

半年間ネットを調査し、事情通の意見も交えながら、「0xlsd」の始まりから終わりまでをまとめた。

仮想通貨詐欺「0xlsd」の一生

1. 計画開始

0xlsdは、中華系シンガポール人が構築したポンジスキーム型の仮想通貨詐欺である。彼らはポンジスキームを「ジョブ」(仕事)と呼び、構築した詐欺スキームを広めることを「デザイン」と称している。これらは分業されており、システムを構築する組織と、それを広めて販売する「マーケティング」会社は別の存在である。

「マーケティング」グループは、日本、香港、韓国で0xlsdを拡散させた組織である。国際犯罪であるため、日本の警察に訴えても対応が難しい。日本国内の被害額は2億3000万円にのぼり、一時期話題になった「トケマッチ」の被害額2億円を超えているにもかかわらず、報道はほとんどされていない。

2. トップ集団からスピーカーへ

「スピーカー」と呼ばれる第2次参加者へと広まるタイミング。YouTubeやSNSを駆使して情報を拡散する知識を持ち、知人とのトラブルを恐れない(サイコパス気質の)人々が「スピーカー」として活動する。この人々は「マーケティング」グループとつながりを持ち、詐欺スキームの破綻時期をいち早く察知する。

「スピーカー」の主な勧誘手口はセミナーやハニートラップといった使い古された手法であるが、いまだに効果を発揮している。最初は「付き合いだから少しだけ」と少額の投資から始めさせ、コンコルド効果(過去の投資を無駄にしたくない心理)を利用して徐々に大きな額を投資させる。

3. 一般参加者の入金

「スピーカー」による紹介で第3次参加者以降が投資を始める。投資のきっかけはセミナーやSNSでの知り合い経由であり、関係性は希薄なことが多い。一方で、真剣に良い投資だと信じ、親しい友人や家族に紹介してしまう人もいる。この場合、詐欺と気づいた時の精神的ダメージは計り知れない。

一般参加者の中には、早い段階で投資し、ある程度の利益を得た者もいる。中にはポンジスキームと知りながら投資する者も存在する。この時点で参加者が爆発的に増加し、トップグループに莫大な利益をもたらすが、実際の財務状況は完全に破綻している。

仮想通貨の世界では、大口の資金を動かす者を「クジラ」、詐欺通貨に群がる一般投資家を「イナゴ」と呼ぶ。

4. 出金停止と混乱

「ジョブ」グループは負債を支払わずに済むよう、突然出金を停止する。一般参加者は騒ぎ始め、「マーケティング」グループに返金を求める。しかし、「マーケティング」グループの役割はあくまで詐欺商品の拡散であり、事態の収拾もその一環とされている。彼らは詐欺罪での立件を回避するため、「返金の意思がある」ように見せかける。

日本ではこの手の詐欺に対する認識が乏しく、詐欺グループは国際的に活動しているため、黒幕は表には出てこない。表に出て説明するのは「アクター」(俳優)であり、彼らは台本に沿って釈明を行う。

5. 風化と諦め

出金停止から数か月が経つと、怒っていた被害者たちも徐々に諦め始める。2025年には完全に風化し、多くの人が損失を受け入れるしかなくなった。

  • 多額の損失を出して怒りを感じるが、警察に訴えても冷たくあしらわれる。

  • 友人や家族を巻き込んでしまい、強い自責の念に駆られる。

  • 経済的に困窮し、日々の生活に追われるようになる。

仮想通貨詐欺は「物無しマルチ」であり、国際犯罪でもあるため、日本の警察が対応するのは困難である。こうして被害者はお金を取り戻すことを諦める。詐欺グループのトップは「デザイン」を完了させ、新たな詐欺計画を始める。

6. 新たなポンジスキームの誕生

仮想通貨詐欺「0xlsd」の始まりから終わりを見届けたが、報道もされず、逮捕者も出ていない。「スピーカー」となったYouTuberたちは0xlsd関連の動画を削除し、新たな案件の宣伝を始めている。チャンネル凍結もされることなく、新しい詐欺案件を拡散している。

2024年5月には「0xlsd」グループは新たな詐欺案件「ubit」を開始していた。その他にも「ubit」「RFI」「ZEUSTREE」「playme」「dop」など、次々と新しい詐欺通貨が生まれている。

詐欺グループは「騙された人のリスト」を共有し、繰り返しターゲットにする。あってはならないことだが、もしも同様の手口に遭遇した際の参考になれば幸いである。


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