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角パン
ねおき、あさ六時半に見る部屋の中は視界が揺れるせいで度数違いのめがねで見るみたいに目の前が歪んで見える。ベッドから降りて触れた足裏に、床の温度が鏡のように冷たく、つま先立ちで向かった先の冷蔵庫の中には角パンがなかった。切らしていたのだ。冷蔵庫にはみそと、ネギと、市販の塗り薬があるくらいで空っぽで、わたしは仕方なく外で食べることにした。お気に入りの白い靴下を履いて支度をはじめたわたしの寝癖を暖房の風が揺らす。
ダイダラポッタラの足の下を通り抜けて、マーガレットの茂った花壇の中を歩いた先にある、ネズミ街道のパン屋に入った。パン屋で塩パンと角パンを買った帰りに『森の鯨の絵』の展示会ポスターを見て帰った。
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