退屈な仕事

 朝食に食べたひきわり納豆をひきわりにした工業用刃物のことについて僕は想像していた。ひきわりにされた納豆は細かくて切断面が鋭いから、きっとその刃物はほんとうに鋭いんだろうな。納豆はねばねばしているから、使うたびに刃物についたそのねばねばを洗い落としたりしているんだろうな、毎日。けれどそうしたら、毎日、どれほどの水量が必要なんだろう? どうでも良かった。僕は納豆の工業用刃物の専門家ではないのだ。僕は、納豆の工業用刃物の専門家が今朝食べたご飯について考えてみた。ひきわり納豆かな。いやでも、もしかしたらバゲットとかエッグベネディクトとかをモリモリ食べてるかもしれないな。そのエッグベネディクトを作る時に使った箸が僕の会社の商品だったりしたらすごく面白いんだけどな。社会が回ってる感じがする。僕らは社会の歯車としてすっかり機能してるのだ、僕や、弟や、サガンを読んでいたビジネススーツの女や、盲導犬なんかが今日も働いているのだ。もちろん、毎朝バゲットを頬張る工業用刃物の専門家も、みんな。

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