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シルクロードへの憧れは小説家の夢につながった(1274文字)
幼い頃、自宅の周囲には子どもが少なかったせいもあって、幼稚園に上がるまでは庭で遊ぶことが多かった。
虫を観察したり庭の花の零れ種を蒔いたりして遊んだりしていた。
「となりのトトロ」のメイのように自然を相手に遊ぶ子ども時代。
5歳の頃だったろうか…そんな私に、両親は植物図鑑を買ってくれた。
四季の花々。
寒冷地、温帯、亜熱帯、熱帯、サバンナ、砂漠…気候による植物の生息分布…
原産地の欄では草花の故郷に想いを馳せた。
ある年の夏。
庭に見覚えのない芽を見つけた。
その木は雨が降るたびに、ニョキニョキと伸びていった…まるでジャックと豆の木。
「一年で木になった」は、言い過ぎかもしれないが見るたびに大きくなるように感じられた。
すごいスピードで生長し、いつか私の背丈を抜いた時、その木を見上げる私に父は言った。
「これは南方の木だ」
母は笑いながら言った。
「南から飛んできた鳥のお土産ね」
南国のトリのお土産と聞いて、「鬱蒼とした熱帯のジャングル」を想像するものだった。
異国への憧れもあり、中学になってからは英語も好きになった。
辞書をめくりながら「語源」に興味を持つようになった。
日本語に外来語があるように、英語にも「外国由来の言葉」がある。
昔、言葉の違う人と人は、どうやって心を交わしたのだろうか?
外来語は異文化交流の証拠。
千年、二千年…もっと昔から繰り広げられた人々の交流に思いを馳せた。
シルクロードに興味を持つようになり夏休みの自由研究で調べたこともある。
戦や征服のためではない、人々の暮らしの中の往来と文化の交流。
砂漠を征く、長い長いラクダの隊列…
草原を駆け抜けていく馬の群れ、
海を渡る商船…
異国の文物を商いするカラフルなバザール。
賑やかに、身振り手振りで伝え合う異国の人々。
踊り歌い酒を酌み交わし、夜更けまで続く宴…
なんとロマン溢れる光景だっただろうか!
高校2年の時に言語学・異文化交流などを学ぶ大学への進学を考えたことがあったが、結局その後、私は理系の学部に進んだ。
外の景色を見ることも、遊ぶこともないほどに仕事もした。
その後、長く休職せざるを得ない闘病も経験した…
そんな時、気分転換にと、今まで観たことのない韓国ドラマ、映画、ドキュメンタリー、ニュース番組などを片っ端から観た。
韓国ドラマを観ながら背景が気になる私がいる。
インナーチャイルドが顔を出したのだろうか?
歴史や文化を知ることが、とにかく楽しい。
ドラマを観ながらも、検索に没頭する私がいる。
知ったら伝えたくなる。
家族相手に話したりもした。
そんな私に、母は言った。
「あんたは、文章を書いたらいいよ。何かの賞のためというより、ただ思ったことを書いたらいい」と…
その言葉に、自分も忘れていた「小説家」という子どもの頃の夢を思い出した。
そしてパソコンに向かった。
誰かに伝えるというより、ともかく書いてみよう。
それは小説なのか、ただの日記なのかわからないが心の赴くままに、文章を書き始めることにした…
文章を書いたら、とにかくスッキリするのが不思議だ。
今、大海原を泳ぐウミガメのように広大な「文学の海」を泳いでいる。