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[連載小説]第十五話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第二章スカイドッグスター⭐️バンド結成

[連載小説]第十五話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第二章スカイドッグスター⭐️バンド結成


前回の話はこちら


ここまでのあらすじ



元捨て犬ビーグル犬『イヌ』の飼い主のばあちゃんが心臓の発作で倒れた。イヌの活躍でばあちゃんは救急搬送。
野良犬となったイヌは歌手の夢を持つホームレスの青年ソラと出会う。
意気投合しバディとなった2人。
寅造とともにホームレス生活から再スタートした。
老健施設の歌のイベントの後、イヌは『ばあちゃんの匂い』に気づくが施設に取り合って貰えずしょんぼりしていたが健太と再会。
面会室のガラス越しにばあちゃんと涙の再会が叶った。

第十五話 スカイドッグスター⭐️誕生!

「俺のウチ、ここだよ!上がって」
「じゃ、遠慮なく上がらせてもらうね!」
健太は初対面とは思えないくらい、すぐにソラと打ち解けた。みんな盛り上がって焼き鳥や枝豆をつまみながら酒のすすむ2人。
お互いの生い立ちや、福岡の職場のおもしろ話。ボイトレの頃のトレーナーの話とかで盛り上がった。
ソラなんて、ホームレス時代の武勇伝まで話し出した。

夜が更けていく…。

酒が進んだ健太、こんな話まで打ち明けた。
「僕さ、婚約してた彼女がいたんだけどね。別れたんだ昨日…。
遠距離ってのもあってすれ違い?
それで別れたんだ」
「え〜?!あの彼女さんでしょう?最初の日にチラッと見た人…」
俺は思わず、口を挟んだ。

「え?何て言ったの?」健太が聞き直すのを受けて、ソラは通訳せずに「いや、たいしたこと言ってないし…」
「ま、いいけど。何かモヤモヤすんな…僕だけ仲間はずれみたいな気分…」
「まあ飲め、今夜はトコトン飲め!腹減ったよな。何なら出前とるか?
健太、今晩は泊まっていけよ!」
「いいのか?付き合ってくれるのか?正直言って…今夜はひとりでいたくなかったんだ…。
ソラ、お前って、いい奴だなー。
『イヌ』拾って世話してくれただけでも、充分いい奴だけどなー」



「でさ、福岡帰るのいつ?」
「明日の夕方…でもすぐ、こっちに戻ってくるよ。来月には転勤で、また、こっち帰ることになったんだ」
「え〜、マジ?!」
俺は思わず叫んだ。すると俺の方を向いて、
「今のわかったぞ!『マジ?』って言ったろ?」って、健太が言った。
「正解!」
「なんか、訓練次第でオレも『イヌ語』がわかるようになるかも!」
「『三人』じゃなくて正確には『二人と一匹』だろ?」
俺が言ったら、「それな!」って、二人は声を揃えてゲラゲラ笑った。



「そういや、なんでソラとイヌは、あそこの老健施設にいたの?」
「あそこの施設の『歌のイベント』頼まれてさ…それで」
「え?歌やんの?」
「そうそう、ま、今日のが初めてのイベントだけどねー。オレ、ミュージシャン志望で『コロナ前』までは『ボイトレ』とか通って歌手目指してたんだ」
「えー!スゲーじゃん!!そういや気になってたんだ…。それって楽譜だよな」
「あ、うん…今回、猛特訓受けてさー、秀樹さんてオヤジに習ったんだ」
「へぇ〜!!いいなぁー」
「お前も音楽好きなの?」
「オレ?…学生時代、軽音入ってたんだ」
「え〜っ?!初耳」
俺が言ったら、
「あれ?イヌは知らなかったの?…ばあちゃんちに楽器置いてだけど、ばあちゃんに聞かなかった?」
「いや、前は楽器ってあんま、興味無かったから気づかなかった…てか、健太さっきから俺の話、ソラの通訳抜きで聞き取ってね?」
「おーー?!だよなぁ!才能が開花しちゃったかもなあー!スゲーなオレ」
「言葉移ってるし。ずっと『ボク』って言ってたのに、いつのまにか『オレ』って言ってるしな」
「マジ影響受けすぎ!!」
俺らは、また腹を抱えて笑った。

「音楽やってたなら健太!お前も入れ!バンドやるぞ!今日のは臨時バンドだったけど、メンバー探そうと思ってたんだ、健太も入れ!!」
「え?!バンド?そうだね!来月こっち帰ってくるし、やってみるかな!」

「俺も!!!」
思わず俺も叫んだ。
「マジかよ!」
ソラ、健太が口を揃えて言った。
「いいじゃん!俺だってメンバーになりたい!!」
「よし、決まりだ!」

「じゃあ、バンド名考えないとなあ…」
「うーん」
「そうだ!」健太が叫んだ。
「やっぱソラがリーダーだから、バンド名に『ソラ』入れるとして…うーんそうだ!『スカイ』はどう?」
「短くね?」
「だよなぁ…」
「うーん、この暑さじゃな。考えても今、頭回んねーよなぁ…」
「ちょっと、酔い覚ましに散歩でもいかねー?」
「いいね!」



俺たちは散歩に出かけた。
2人の間を行ったりきたり、こんな幸せな気分味わえるなんて!
「最高だよ!」
川の近くまで来た時、土手に座って、
二人は空を見上げた。
俺も伏せをして、鼻先を上に向けた。

「星、綺麗だな」
「そういや、今日『七夕』じゃん?」
「どれが天の川?」
「そこまでは、わかんないな」

俺には、さすがに星は見えない…。
俺は鼻は効くけど、犬の俺は、目はあまり良くないんだ…
何だか、「ソラや健太と違うんだ」と思えてきて悲しくなった。

トボトボ、シッポを丸めて帰り道を歩いた。
そんな気分に気づいていたのか、公園に来た時、ソラと健太が「寄ってく?」って言った。
忘れ物のボールを投げてくれて駆け回りながら、俺らは、はしゃいだ。



砂場のところがキラキラ光っている。
「アレだよ。イヌ。星ってちょうど、あんな感じに光っているんだ」ソラが、地面を指差して言った。
「そうそう、あんな風に光ってんだよ…空の上でね。綺麗だろ?」
俺に向かって、健太も言った。

俺は地面に鼻を近付けてクンクンして、砂場に近づいてジッーと見た。

「なんか、わかった気がする…これなの…?地面キラキラしてるもんね!
これが『星みたいなヤツ』なんだね?!」
「そうそう、『地球って星のカケラ』
宇宙飛行士が言ってた。宇宙から観たら『俺らの棲む星』も青くキラキラしてるんだって。難しいことは、わかんないけどさ…
この砂場の『星のカケラの小さな砂』も光っているんだ」

「あっ!」健太が叫んだ。
「星だ!スターだよ!『スカイ』に『スター』!そして…そうだなぁ。
『イヌ』のドッグを合わせてバンド名『スカイドッグスター』にしようぜ!」
「おー!!かっこいいね!」
「決まったね!」

俺らのバンド『スカイドッグスター』の誕生だ⭐️


第十六話に続く
ばあちゃんの話

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