[連載小説]第二十七話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第六章スカイドッグスター⭐️群れの拡大
第六章スカイドッグスター⭐️群れの拡大
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ここまでのあらすじ
第二十六話 群れの拡大
寅造じいちゃんがどんな風にプロポーズしたかは、実は見ていない。
「横浜のオシャレなカフェ」の待ち合わせ場所までは一緒に行った。
あんなに緊張した匂いのじいちゃんは、初めてだった。
「じいちゃん、がんばれ!」
俺はシッポをゆらゆらして、声援を送った。
俺たち犬は人の気持ちを「匂い」で感じとることができる。
健太が連れてきたばあちゃんからは、
最高にうれしい時の匂いがしていた。
じいちゃんとばあちゃんは、照れくさそうな顔で「あかいくつバス」に乗り込んで行った。
このバスなら車が無くても、膝の悪いばあちゃんも無理なく横浜を回れるんじゃないかな?
俺とソラ、健太でいろいろ考えたデートプラン…。
ばあちゃん喜んだかな?
港の見える丘公園、
山下公園のバラの匂いでいっぱいのイングリッシュガーデン、
シーバスにも乗ったかな、
潮風を受けながら、ゆっくり散策出来ただろうか?
潮騒の匂いがしただろうか?
みなとみらいの歩道に乗ると海も街もゆっくりと動く
茜色の夕陽に染まる空に続く海も、あかりが灯り出した街も、じいちゃん、ばあちゃんが昔見た横浜とは違っていたかもしれない…
そんな移り変わる時を超えて二人は会えたなんて、不思議だな…
寅造じいちゃんに最初に会った時に、ばあちゃんと似た匂いがしたのを俺は思い出した。
あれは気のせいではなかった。
寅造じいちゃんは、ばあちゃんの「運命の人」なのかもしれない。
俺たち犬が感じる匂いは、香水とかでは隠せない。
その人の放つ匂いを感じている。
高架下で出会った時から、強面のじいちゃんの「心の香り」は俺の大好きな匂いだった。
大好きなばあちゃんを幸せにしてくれる人なんだろう。
寅造じいちゃんは、ソラとネットで調べた「夜景の綺麗なレストラン」も予約していた。
「花束は、レストランに預けて置いてタイミングを見計らってサプライズするつもりだ」と言っていたんだって。
想い出の横浜で、五十年越しのプロポーズ…
ばあちゃん、ポロポロ泣いただろうな…
ばあちゃんは、プロポーズをもちろんOKした。
横浜の宝石店に寄って指輪もプレゼントしてもらったんだって、うれしそうに言ってた。
今度は結婚式。
俺たちは、二人にガーデンウェディングを挙げることを提案した。
「そんな小っ恥ずかしい…」
「この歳になって…」
二人ともそう言っていたけどね。
健太が、「ばあちゃんを祝ってあげたい」と強く言って、ささやかな式を挙げることができた。
屋外だから…俺もシッポを精一杯振って祝えた。
ばあちゃん、ものすごく綺麗だったな。
「二人で住めよ」とみんなは思っていたが、ばあちゃんが健太に、
「寅造さんを健太と同居させてあげたい…」
健太からは、
「急に『実のじいちゃん』となったから、なんて喋っていいかわからない…ソラとイヌもウチに住んでよ」
というオファーをされた。
ばあちゃんからも、寅造じいちゃんからも、
「そうしてくれるかい?」と頼まれて、俺たちも同居することになった。
俺たちは、寅造じいちゃん、ばあちゃん、健太、ソラ、そしてイヌ…という「大きな群れ」になった。
最終話に続く
輝く星のカケラ
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