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[連載小説]第十六話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第三章スカイドッグスター⭐️SNS戦略
[連載小説]第十六話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第三章スカイドッグスター⭐️SNS戦略
ここまでのあらすじ
元捨て犬ビーグル犬『イヌ』の飼い主のばあちゃんが心臓の発作で倒れた。イヌの活躍でばあちゃんは救急搬送。
野良犬のイヌは歌手の夢を持つホームレス青年ソラと出会う。
意気投合しバディとなった2人。
寅造とともにホームレス生活から再スタートした。
老健施設の歌のイベントの後、イヌは『ばあちゃんの匂い』に気づくが施設に取り合って貰えずしょんぼりしていたが健太と再会し、
面会室のガラス越しにばあちゃんと涙の再会。
ソラ、健太、イヌはバンド『スカイドッグスター』を結成することに。
第三章
スカイドッグスター⭐️SNS戦略
第十六話
ばあちゃんの話
「よーし!オレたちの『スカイドッグスター』誕生を祝って乾杯!!」
やがて八月。
いよいよ健太が福岡から引越してくる。ばあちゃんの体調を考えた健太は、ばあちゃんと同居することにしたんだって。
「ふぅ〜、これでラストだ。今日は、手伝ってくれて、ありがとう!」
「終わり?荷物、結構少ないね…」
「うん、あっちは『家具付き社宅』だったからね…。それに向こう行く前にばあちゃんの所に、荷物置かせてもらってたから。
よし、今日はおごるよ。肉買って焼き肉にするかー」
「やった〜!!」
「わーい!最高!!」
健太、ソラはビールや酎ハイ、肉をたくさん買ってきて引越し祝いの『焼き肉大会』をした。
もう匂いがたまらない!!犬にとっても最高のディナーだ。焼いてる間、
「待て!」と言われるけど、ヨダレたらたらだ。
もちろん肉は、俺の分も焼いてくれたよ!!
「こんなの毎日でもいいなー!」俺は思わず言った。
「そりゃ、無理だろ!月末前に食えなくなるよ〜」
「週1は?」俺の質問に健太は、
「うーん、考えとく」だって。
「は〜、食った、食った!」
「ごちそうさま!」
「うまかったな。実は、オレも焼き肉なんて久しぶりなんだー」
「俺も!!てか、初めて」俺が言ったら、
「そりゃ、そうだろ!」って二人に突っ込まれた。
「そう言えば、もうすぐなの?お前のばあちゃんの退院?」
「うん、今週末ね〜」
「良かったなあーー!」
「ホント、すっかり元気だよ!」
「良かった…」倒れた時のことを知ってるだけに、俺も本当に嬉しい…。
「実は…福岡からの転勤、オレが申し出たんだ…。何にも聞かないから、オレから言うけどさ…。
オレ、ばあちゃんに育てられたんだ、このウチでね」
俺たちは黙って、健太の話を聞いた。
「昔ね、オレが中学の頃、父ちゃんと母ちゃん、交通事故に遭ってさ。
それで…」
「……」
「ばあちゃんの一人娘だったんだ…母ちゃんは。
で、ここに引き取られた…。
夜中、目が覚めて水飲みに行ったら、奥の部屋でばあちゃん泣いてた…。俺の前では、いつも明るくしてたけど…。当たり前だよなぁ。
母ちゃんのこと、女手一つで苦労して育てたんだって…」
「……」
「だからね…オレ以外、身寄りいないんだ、ばあちゃんには」
「…そうだったんだ」
「でも、ばあちゃん、あの性格だろ?オレの前では、いっつも明るくてっさ。寂しい想いは、そんなにしなかったかな。今は仕事辞めたけど、ずっと働いて大学まで行かせてくれた…」
イヌの俺も、ここに住んでた半年間、全く気づかなかった…ばあちゃんがそんな悲しい過去を抱えていたなんて…。
「この話は、ここでおしまい!
ばあちゃんもオレも、元気に暮らしてきたから…。心臓もクスリ飲んでたら大丈夫って言うし」
「ヨシ!!退院したら、オレらで快気祝いしないとな!」
「オレも考えてたんだよ。お祝いに何かしたいんだけど…」
「ありがとう!でも心配すんなよ…
そうだなぁ…歌、歌ってお祝いしようか!」
「イイね!」
「賛成!!」
第十七話に続く