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[小説] 続・クロウサギ物語 アマミノクロウサギ🐰ピョンタの聴く雨の音(約1900文字) #シロクマ文芸部#雨を聴く
クロウサギ物語の続編を書きました。
[前回のあらすじ]
むかしむかしのお話。
ピョンタはお母さんと暮らすクロウサギ。
妹たちが生まれ、お兄ちゃんになったピョンタ。
それでも、お母さんは、いつも、あれこれ注意をするので「うるさいなぁ」と思っていた。
ある日、ピョンタは海辺に棲む友だちうさぎのピョン吉くんのところに遊びに行くことに。
ピョンタがピョン吉くんのところで遊んでいると、ものすごい地鳴りがした。
大きな地震…
ピョンタは、ピョン吉くんのお母さんといっしょに「こんもりの森」の奥に入って何日も身を潜めるように過ごした…
地震が終わった。
ピョンタ、ピョン吉くんの棲むところは大陸から離れ「島」になってしまった…
奄美が大陸から移動したのだ。
ピョンタは、はじめて見る「海」を前に大きな声で「お母さん!」と叫んだ…
#シロクマ文芸部
続・クロウサギ物語
ピョンタの聴く雨の音
雨を聴くと、お母さんを思い出す。
あの地震の後、クロウサギのピョンタは、お母さんと住んでいた故郷にまだ帰れていない…
最初は、毎日、泣いて過ごしていた。
「ザザーンザザーン」と音をたてる広い大きな水たまり…
それは海だった。
「いつか、あの海を渡って故郷の森に帰るんだ!
お母さん!ボク、がんばるよ!!」
ピョンタは、その日を夢見て、たくましく生きることを海の向こうのお母さんに誓った。
🐰
🐰
🐰
あれから長い年月が経った。
今ではピョン吉くん家族と一緒に元気に明るく毎日をすごしている。
でも、雨の音を聴くと、お母さんと過ごした楽しい日々を思い出す…
ピョンタが聴いた思い出の雨の音
「シューシューシューッ」
ボクが気づかないような細かい雨の音にもお母さんは敏感だ。
お母さんは出かける前にはいつも穴を掘った。
そこに座らせるとボクに土を被せてくれた。
これがボクたちクロウサギのお留守番スタイルだ。
「今日は、地面がぬかるんでいるから、こんな日はニンジンが抜きやすいの」と言っていたお母さん。
細かい雨の日は、ご馳走がいっぱい食べられる。お母さんは美味しいニンジンをたくさん持って帰ってきた。
ボクがニンジンをボリボリ食べていると、お母さんは嬉しそうにボクのことを見ていたな。
お母さんの真っ黒な前脚は土だらけで、カラダはしっとり濡れていた。
「ポチポチポチポチッ…
ピチ…ピチ…ピチ…
チ…チ…チ…チ……」
外にも出かけられず大きな木の陰の巣穴で過ごしていた時のこと。
さっきまで降っていた雨の音が変わった。
「もうすぐ雨が上がるわよ、ピョンタ」
ボクも短い耳をそばだてて聴いた。その音がすると決まって、すぐに雨が上がった。
雲間から現れたキラキラした日差しがボクらを包んだ。
向こうの山の方がいろんな色で綺麗だ。
ボクはお母さんに聞いた。
「うわーお母さん、あれは何?」
「虹🌈よ!お母さんね、虹が大好きなの、綺麗ね…」
向こうでは、鳥さんたちも嬉しそうに歌を歌っていた。
「グワーグワーグワーグワッー、
ピカッー!
……ズドーンッ!!」
朝から続く雨はどんどん強くなっていった。
耳が痛いくらいの音がする。
ピカッと昼間みたいに明るくなった瞬間、ものすごい音がした。
「雷よ!
ピョンタ!!ここはあぶない!
ここから離れましょう!」
そう言ってボクらはその木から離れたほうに向かって、ずぶ濡れになって逃げた。
「あんなグワッーグワッーという大雨の日には『ピカッ』と光る龍が空から降りてくる。
大きな木のそばにいたら逃げるのよ!
穴に入るか広いところに行くの。
いつもはあぶないから行ってはいけないって言っているけど広いところにね。『ピカッ』は、ヘビより怖いのよ」
深い森の奥で暮らすクロウサギのボクたちには怖い敵がいっぱいいる。
「ああいうところはあぶない」
「ヘビにあったら、こうするのよ」
あの頃のボクは小言を言うお母さんに、
「うるさいなぁ、ボクももうお兄ちゃんなんだ、いちいち言わないでよッ」と切れて反抗していた。
今、雨の音を聴くと思い出す…
生きていくために大切なことは全部お母さんから教わっていた…
ボクはもうすぐ、お父さんになるんだ。
「お母さん、ボク、がんばって生きているからね」
ボクは雨の音を聴きながら、外に出て空を見上げた。
「ピチピチ…ピチッ」
と降っていた雨はまばらになった。
………… … … … …
・ ・ ・ 「ピチョーンッ」
見上げたボクの耳と耳の間に冷たい水滴が落ちてきた。
「冷たいっ」
遠い海の方に目をやると、向こうの海には、びっくりするくらい大きな二重の虹がかかっていた。🌈🌈
おしまい
小牧幸助さん
#シロクマ文芸部
#雨を聴く
いつもお世話になります
企画に参加させて頂きます♪
よろしくお願い申し上げます!