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[連載小説]第二十話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第四章スカイドッグスター⭐️路上ライブ挑戦へ
第四章スカイドッグスター⭐️路上ライブ挑戦へ
前回の話はこちら
ここまでのあらすじ
元捨て犬のビーグル犬『イヌ』は飼い主のばあちゃんが心臓の発作で倒れ、野良犬になった。
歌手の夢を持つホームレス青年ソラと出会い意気投合。バディとなり、やがて寅造とともにホームレス生活から再スタート。
さらに老健施設の歌のイベントの後、イヌは健太、ばあちゃんと涙の再会を果たした。
ソラ、健太、イヌはバンド『スカイドッグスター』を結成し、
SNSに動画をアップし始めた。
動画撮影では、オヤジバンドを組む寅造じいちゃん、源じいちゃん、秀樹さんも演奏で参加。
打ち上げの後、スカイドッグスターは路上ライブに向けての挑戦をすることにした。
第二十話 はじめての井の頭公園
秋晴れの日曜日、朝早く迎えに来てくれた健太の車に乗って吉祥寺へ!
ばあちゃんが弁当も作ってくれた。
「ばあちゃん、ありがとう!」
「ああ〜風が気持ちいいなぁ」
俺は、ドライブ大好きなんだ。
窓から風が吹きこんできて、耳がフワッと浮き上がる。
鼻に飛び込んでくる、いろんな匂い!
鼻が喜ぶって感覚わかる?
この感じが好きなんだ。
「ドライブって気持ちいいなぁ!
ねえ、健太、ソラ!」
「着いたよ」
車から降りた俺は、思わず歓声を上げた。
「ワン!!」
テンション上がるよ〜!!
「リード付けてないとダメだけど、ここなら思いっきり遊べるね!」
「やっぱ広いなぁ!」
「気持ちいいね〜」
「ねえ、ここで写真をいっぱい撮ってさ、SNSにあげようぜ」
「それな!」
ソラも健太もはしゃいでいる。
ここは、まるでパラダイスだ。
どの犬も満面の笑みを浮かべて、シッポふりふりして歩いている。
みんな、ご機嫌だねー。
「おや?!」
オシャレな真っ白なプードルが、
「ご機嫌よう!」って俺に微笑んだ。
俺も気取って挨拶を返した。
「ご、ご機嫌よう…」声もうわずるな〜。
「マジ美形…」
「イヌ、見とれるな。置いてくぞ!」
「え〜待って待って…ここで浮かれるなって方が無理だろ?!」
ここは、いろんな動物にとっても楽園みたいだ。
池では水鳥が優雅に泳いでいる。
「都会の中に、こんな自然あふれる公園があるんだねー」
「気持ちいいなぁ」
「観て!!あっちゴールデンレトリバーがいっぱいいるよ!」
俺たちに気づいた常連風のゴールデンさんが、フサフサしたシッポをゆらゆらして挨拶してくれた。
「ようこそ」って言っている。
「目が優しい〜!」
「歓迎されたみたいだねー」
アートの展示も賑やかだ。手作りアクセサリー、かわいいぬいぐるみ、ほっこりするアート作品…
公園のあちこちがカラフルな雑貨屋さんみたいで、観てるだけでもワクワクする。
あちこちで大道芸人のパフォーマンスもあるみたいだね。
お客さんとのやり取りも楽しそう。
「ねえねえ!イベントしてるみたい。向こう行ってみようよー」
健太の声のする方へ走った。
向こうでは「お猿さんのパフォーマー」が芸を披露していた。
それを観る柴犬、フレンチブルドッグ、プードル、ゴールデン。
そして俺ビーグル。
「彼も人間相手ならともかく、『観客が犬』なんて複雑な気持ちかもしれないなぁ」そんなふうに俺は思った…。
彼はさすが『プロのパフォーマー』だ。
クールな表情でバッチリ演技を決め、「ドヤっ!」って顔してる。
健太もソラも大きな拍手を送っていた。俺も思いっきり、『最高級のブラボー』を込めてシッポを振った。
ソラと健太は、同時に叫んだ。
「ここだよ!!」
「オレも同じこと考えてたかも。ここのイベントスペースの申請の仕方調べてみよー!」
すぐにスマホであれこれ調べ出した健太とソラ。
「井の頭公園アートマーケッツ」募集要項の文字が目に入った。
俺も心が浮き立ってシッポを立てた。
「ここだね!スカイドッグスターらしく歌える場所は!!」
俺たちは歓声を上げた。
「応募してみようー!!」
「ワンワン!ワン!!」
第二十一話に続く