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[連載小説]第十七話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第三章スカイドッグスター⭐️SNS戦略
第三章スカイドッグスター⭐️SNS戦略
前回の話はこちら
ここまでのあらすじ
元捨て犬のビーグル犬『イヌ』。飼い主のばあちゃんが心臓の発作で倒れた。イヌの活躍でばあちゃんは救急搬送。
野良犬になったイヌは、歌手の夢を持つホームレス青年ソラと出会い意気投合。バディとなった。
寅造とともにホームレス生活から再スタートした。
老健施設の歌のイベントの後、健太と再会。
面会室のガラス越しにばあちゃんと涙の再会できた。
ソラ、健太、イヌはバンド『スカイドッグスター』を結成することに。
ばあちゃんが、健太を苦労して育てたことを知り涙する。
第十七話
スカイドッグスター⭐️SNS戦略
ばあちゃんは無事退院した。
お祝いの歌もとても喜んでくれた。
それからは、練習づけの毎日を送った。
健太が仕事帰りに車で俺たちの家に来て、源じいちゃんのガレージに行って練習。
週末は、ばあちゃんの家に泊まりがけで合宿。
秀樹さん、寅造じいちゃんの二人はオブザーバーみたいな感じで、しょっちゅうガレージでの練習に顔を出してくれた。
秋になった。
「早く、路上ライブしたいな〜!!」ソラが言ったら、健太が
「だよなぁ…でも、まず流行りの歌でSNSにアップしたらいいんじゃない?DTUBEかなぁ…」
「うーん」
俺はこう言うの、実はちょっと詳しい。
ばあちゃんと『主人公がバンド組んで、デビューしていくドラマ』をいくつか観たことがあるんだ。
韓国だったらホンデ(弘大)ってところで歌うみたい。
「まずね、短いのがいいよ。SNSのDigDogに短めの曲あげるのがよくね」
ソラも健太も、口を揃えて、
「いいじゃん!!」
「どうしたらバズるかな…そうだ!イヌお前、もちろん出るよな」
「え?」
「#バンド#JPOPだけでは弱いから、『#犬』でタグ付けするのはどう?犬動画を観てるターゲットをつかむ戦略だよ」
健太のアイディアに、ソラはすぐ「賛成!」だってさ。俺抜きで話が盛り上がる。
「じゃあ、第一印象が大事だから…イヌのシャンプーするぞー!」って?
「ムリムリムリ!!ほんま、ゴメンやで!苦手なの知ってるだろ?
シャンプーが目に入ると痛いんだ…」
「ダメ!お前、そのままじゃ厳しいって。生まれたてな感じ過ぎ。
『キャー!!かわいい〜!!』って言う『イヌ推し』を作らなきゃね」
「そうだ!」
「水もシャンプーもドライヤーも無理って言ってるだろ…ひどいな健太まで…」
有無を言わさず風呂場に連れて行かれた俺。
秋なのに30度超える暑さの中で『ドライヤー』されるの…アレも嫌なんだ。
『ブルブル』ってすれば乾くのにさ。
俺はされるがままに、シャンプーされ、シャワー掛けられ、仕上げのドライヤーをされた…。
「我慢だ我慢…」
「なかなか良くね?」
「いい感じ」
「もう、他人事だと思って…ちゃうか…『犬ゴト』ね…」
「おや、綺麗になったねー!イヌ」
「あ、ばあちゃん!」
「こんにちは!お邪魔してます」
「そろそろ、お昼にしようかね。魚焼いたんだよ。焼き芋は、後でおやつに食べな」
「わあ、いただきます」
「イヌの分は、ほらココに。茹でたササミをほぐしてフードに入れてあげるからね。スープもかけるよ」
「イヌいいな〜お前のは、スペシャルメニューだね」
俺は、ばあちゃんの「綺麗になったね〜!」のひと言でDigDogに出て、がんばることにした。
いよいよ選曲だ。
「どうする?一発目の動画」
「うーん、imaseみたいな才能あればな…。大人気だろ?
すごいよなぁ〜韓国でも人気だってさ」
「ま、オレたちは自分の持ち味でよくね」
「それな」
「オレらには、『イヌ』がいるし」
「は?」俺か?
「で、曲、やっぱ、『NAIGHT DANCER』は、外せないな。これは決まりね」
「おけ!そいで次、あれやろうよ。『可愛くてゴメン』イヌの可愛さを全面にアピールしようぜ!」
「いいね〜」
「な?!俺、おもちゃみたくしてない?」
「おもちゃより可愛いって。ピンクの大きなリボンつけて、かわいい衣装着せてやる」
「絶対、バズる!!」
「は〜?」
俺の人権無視して話が進んだ。
犬だから犬権か?そんなことはいい。
「よーし、いいぞ」
「お前にかかっている」
「笑顔、笑顔。肉のこと考えろ」
「フォロワー10000達成したら焼き肉だぞー!」
「エサで釣るなんて…でも焼き肉の力は最強だ」
俺は『NAIGHT DANCER』『可愛くてゴメン』の音楽にのせて、真ん中でダンスさせられた。
それから徐々に人気が出て、10月にはフォロワー1000達成。
「いよいよ、行くか!
ここからはオレたちで歌うカバー曲をあげるとするか」
「よし!何にする?」
「やっぱ、イヌ推しに受ける曲…
イヌの可愛さを出す曲ないかなあ…あれだ!!…曲、送るよ」
「お?!いいね!」
「何だよ〜2人だけで…オレにも聴かせて!」
アイナ・ジ・エンドのZOKINGDOG
「何回もワンワンワんの歌詞あるじゃん!」
「イヌ、お前はそのままでいい。お前の素でいけ!ここのフレーズ、思いっきり吠えるんだ」
「ボーカルはソラだろ?でさ、このスカパラの演奏部分、寅造じいちゃんたちに協力頼んでみない?
スカパラみたく、楽器したらどう?」
「最高!」
もちろん、三人は喜んで参加してくれた。
じいちゃんたち、あれからバンド続けていたんだ。秀樹さんの学生時代の仲間も巻き込んでオヤジバンドを結成。
で、老健施設の慰問も続けていたんだ。
アイナ・ジ・エンドのZOKINGDOG確かにバズって、フォロワー5000を超えた。
「焼き肉は?」
「まだ、あと少し待て」
第十八話に続く