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もこすけ|てのひらの物語
2021年7月24日 18:09
弁当を買いに、近所の惣菜屋に出かける。昼休みのピークを過ぎた店内に客は私一人だった。「唐揚げ弁当一つ。」「はーい。唐揚げ一つ。今揚げますんでね、ちょっと待っててください。」汗で落ちそうになる眼鏡を首のタオルで押し上げながら、おばちゃんは抑揚のない声で淡々と鶏肉をフライヤーの中に投げ入れた。脇に3脚おいてある丸椅子に腰かけ、本を開く。ノーベル文学賞作家、アレクシエーヴィチ・スヴェトラーナの