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連載小説『殺し屋のるーる』④

3月公演『殺し屋のるーる』の戯曲を小説風にしてみました。もうこれはほぼほぼネタバレです(笑)

どうぞお楽しみください。 

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【登場人物】

チヒロ(私生活ではニートだが裏の顔は殺し屋 殺し屋協会所属)  

サエキ(殺しの依頼人 殺し屋協会所属) 

エモト(殺しのターゲット 殺し屋協会京都支部所属) 

キノッピー(チヒロのニート仲間 ゲーム好きのニート) 

タケポン(チヒロのニート仲間 夢追い型ニート) 

サエコ(コンビニの店員 コンビニではチヒロの先輩 年下なのにチヒロに先輩風を吹かせる小生意気なイマドキ女子高生)

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《前回からの続き》  

サエキから詳細を聞き出すうちに、心の中のざわつきはさらに増していった。エモトがターゲットに情をかけた理由をうちは知らない。だが、ルールを破ったその結末が「粛清」であることだけは変わらない。それが、この仕事の冷酷な掟だ。 

「今回の依頼は協会からの直々のものや。お前にしかできんってことでな」

サエキが自信満々に言う。 

「どういうこと?」 

「人見知りのお前なら、どんだけエモトに接近しても情は移らんやろ、ってさ」 

皮肉めいたその説明に、うちは笑う気も起きなかった。 

「潜入先は『ニコさんマート』っていうコンビニや。エモトはそこに店長として潜り込んでる。お前もバイトとしてそこに入れ」 

「コンビニでバイト……?」 

想像しただけで胃が痛む。接客が苦手なうちが、見知らぬ人と笑顔で応対する?それこそ拷問だ。 

「期限は一週間。その間にエモトが匿ってるターゲットの情報を引き出し、最後にエモトを片付ける。それだけや。」 

「……簡単そうに言うなぁ」 

「簡単にやればええ」 

サエキはそう言うと、さっさと帰っていった。残されたうちは深い溜息をつき、足元で寝ているキノッピーとタケポンを見下ろした。 

「……なんでこんな仕事選んだんやろ、うち」 

翌日、うちはコンビニの面接に向かった。 
(続く)

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