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連載小説『殺し屋のるーる』⑥

3月公演『殺し屋のるーる』の戯曲を小説風にしてみました。もうこれはほぼほぼネタバレです(笑)

どうぞお楽しみください。 

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【登場人物】

チヒロ(私生活ではニートだが裏の顔は殺し屋 殺し屋協会所属)  

サエキ(殺しの依頼人 殺し屋協会所属) 

エモト(殺しのターゲット 殺し屋協会京都支部所属) 

キノッピー(チヒロのニート仲間 ゲーム好きのニート) 

タケポン(チヒロのニート仲間 夢追い型ニート)

サエコ(コンビニの店員 コンビニではチヒロの先輩 年下なのにチヒロに先輩風を吹かせる小生意気なイマドキ女子高生)

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《前回からの続き》 

初日の勤務を終えて事務所に戻ると、エモトが待っていた。彼は缶コーヒーを差し出してきた。 

「お疲れさん。どうやった?」 

「疲れました」 

「そらそうやろな。サエコに鍛えられるとそうなるわ」 

彼は笑いながら自分も缶コーヒーを開けた。 

「でもな、あいつ悪い奴ではないで。なんやかんやでちゃんと見てるから」 

「ほんまですかねぇ」 

「まあ、チヒロ。お前のこと、俺は気に入っとるよ」 

その一言が妙に引っかかった。エモトはうちの正体に気づいているのか?それとも単なる店長としての言葉なのか? 

………  

潜入3日目 

「チヒロさん!何なん?その『ありがとうございました』は!」 

サエコの容赦ないダメ出しが飛んでくる。うちが腹式呼吸を試してみると、案の定おならが出てしまい、サエコにまた笑い者にされる始末。 

その日の夜、エモトが事務所に入ってきた。 

「サエコが言うとったで。チヒロ、腹式呼吸で失敗したらしいな。」 

「もう!何でそんなこと言いふらすん!」 

うちの抗議を受け流しながら、エモトはニヤニヤしている。 

「でもな、チヒロ。みんなお前のこと気に入っとるみたいやで」 

「そんなん言われても……」 

彼の言葉はどこか温かく、殺し屋としての冷酷な自分を忘れさせるものだった。だが、それが余計にやりづらかった。
(続く)

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