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連載小説『殺し屋のるーる』⑦

3月公演『殺し屋のるーる』の戯曲を小説風にしてみました。もうこれはほぼほぼネタバレです(笑)
どうぞお楽しみください。 
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【登場人物】
チヒロ(私生活ではニートだが裏の顔は殺し屋 殺し屋協会所属)  
 
サエキ(殺しの依頼人 殺し屋協会所属) 
 
エモト(殺しのターゲット 殺し屋協会京都支部所属) 
 
キノッピー(チヒロのニート仲間 ゲーム好きのニート) 
 
タケポン(チヒロのニート仲間 夢追い型ニート) 
 
サエコ(コンビニの店員 コンビニではチヒロの先輩 年下なのにチヒロに先輩風を吹かせる小生意気なイマドキ女子高生)
 
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《前回からの続き》 
 
潜入生活が3日を過ぎた頃、うちは徐々にエモトとの距離を詰めていった。と言っても、こちらから特別何かを仕掛けたわけではない。ただ、彼がうちにやたらと話しかけてくるのだ。 
 
「チヒロ、殺し屋に、興味ない?」 
 
仕事中、レジで小休止しているとき、突然そんな質問を投げかけられた。 
 
「えっ、急にどういうことですか?」 
 
「いや、お前さ、接客苦手そうやから、なんかもっと、向いてる仕事あるんちゃうかなって」 
 
私は一瞬、心臓が止まるかと思った。彼は冗談のつもりなのか、それともうちが協会の人間だと知っているのか……。 
 
「まあ、うちの仕事も楽じゃないけどな」 
 
彼が言った“うちの仕事”が何を指しているのか、この時点でははっきりしない。ただ、その言葉がうちの中に奇妙な引っかかりを残した。 
 
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サエコの疑念 
 
一方で、サエコという女子高生バイトには完全に振り回されていた。 
 
「チヒロさんって、ほんまに普通の人なん?」 
 
休憩中、突然彼女がそんなことを言い出した。 
 
「えっ、どういう意味ですか?」 
 
「いや、なんかさ、普通の人にしてはちょっと怪しいっちゅうか……うーん…ひょっとして、チヒロさん、殺し屋?」 
 
「えー?んなわけないでしょ」 
 
うちは精一杯笑ってみせたが、彼女の目はじっとうちを見据えている。 
 
「やんなあ?冗談冗談、ハハハ、んなわけないよな。チヒロさんがもし殺し屋やったらうち、逆立ちして通天閣一周したるわ。」 
 
そんな冗談とも本気ともつかない宣言に、うちはどう返せばいいかわからず、苦笑いするしかなかった。
(続く)

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