連載小説『殺し屋のるーる』⑧
3月公演『殺し屋のるーる』の戯曲を小説風にしてみました。もうこれはほぼほぼネタバレです(笑)
どうぞお楽しみください。
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【登場人物】
チヒロ(私生活ではニートだが裏の顔は殺し屋 殺し屋協会所属)
サエキ(殺しの依頼人 殺し屋協会所属)
エモト(殺しのターゲット 殺し屋協会京都支部所属)
キノッピー(チヒロのニート仲間 ゲーム好きのニート)
タケポン(チヒロのニート仲間 夢追い型ニート)
サエコ(コンビニの店員 コンビニではチヒロの先輩 年下なのにチヒロに先輩風を吹かせる小生意気なイマドキ女子高生)
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《前回からの続き》
5日目の夜、エモトはうちにビール缶を渡しながら言った。
「チヒロ、お前って、結構面白い奴やな」
「うーん…そうですかねえ…」
「いやいや、お前には素質があるで。俺らの仕事に。」
その「俺ら」という言葉が気になったが、深く突っ込むべきではないと思い、飲み込んだ。だが、次のエモトの言葉はうちの思考を止めた。
「なあチヒロ。殺し屋になる気はないか?」
「え?……何でそんな話になるんですか?」
「俺な…実は殺し屋やねん」
冗談めかして言う彼の表情は、なぜか冷たい笑みを浮かべていた。彼が本当に殺し屋であるのか、それともうちを探るために演技しているのか――判断がつかない。
「ふーん、そうなんですか」
うちはできるだけ平然を装い、缶ビールを傾けた。
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エモトが「俺は殺し屋だ」と口にした瞬間、心臓が跳ねた。しかし、それを顔に出さないように努めた。殺し屋同士の駆け引きでは、油断が命取りになる。
「へえ、殺し屋なんですか。意外ですね」
うちは平静を装い、缶ビールを傾けた。
「お前、普通驚くとこやろ。何でそんな冷静やねん」
エモトは笑いながらうちをじっと見つめていた。彼の視線がうちの奥底を見透かしているようで、思わず目を逸らす。
「驚いてますよ。ただ……なんか意外すぎて、リアクションが追いつかないだけで」
「そうか。まあ、驚かん方がええ。俺みたいな仕事してると、驚き過ぎて何もできん奴はすぐに消されるからな」
その一言に、エモトの裏の顔を垣間見た気がした。冗談のように笑っていても、その瞳の奥には冷徹さが漂っている。
(続く)