心霊童話 星もチラチラきれいな夜なのに…。
昔々、まだ川はとても綺麗で、
川底までも透けて見える位のあの時代、
ある親子は、早朝まだ星もチラチラと
輝いて見える頃から、父のバイクに乗って
川へウナギを捕りに出かけました。
女の子はまだ5歳。少しワクワクしながら
父の背中につかまり現地へ到着。
辺りはシーンとしています。
耳に届くのは夏の虫の声。
それがまた静けさを倍増してくれるBGMとなり、ウナギ捕りの仕掛けを設置したりと
忙しくしている父の背中を見ながら、
女の子は、その静けさと向き合っていた。
時折、まだ明けてこない空を見ながら
星の輝きに、しばしうっとり。
しかし、何かがおかしい事に気付いた!
何だろうこのゾワゾワした感じは?
心のなかでは、不安の雲が行ったり来たり。
ものすごく寂しい思いに包まれていた。
もう限界だ!と思った。何故かそう思った。
女の子は、それまで静かにして川の縁で
ジッとしていたが、父へ言った!
「もう帰ろう!」と…。何度も言った!
父は「まだ来たばかりだろう。」と帰る様子も感じられない。
女の子は、また何度も言った!
それを言わずにはいられなかった。
「帰ろう!帰ろう!帰ろう!」と…。
父はとうとう、その日のウナギ捕りは諦めて、やっと腰を上げてくれた。
女の子は安堵感に包まれていた…。
やっとこの場を後にする事ができる!
無事に二人は自宅へ帰り着いた…。
そしてそれから何十年か経って、
幼い頃のウナギ捕りの話に成った。
父に「あの時は、やけに物寂しさに包まれて、ここに長く居てはいけない気がしたの。」と言った…。
すると父が告白するかのようにボソリと言った。「あそこはなー、昔水害が起きて、川に家や人々が流されて積み重なる様に人が流れ着いた場所なんだよ…。」と…。
なるぼど!そうだったのか!と…。
あの日の女の子は、あの時の不安感や物寂しさ、長くここに居てはいけない感覚など、
全体のもやもやした感覚、それらにやっと
つじつまが合った事にホッとした。やっと方程式が解けた感覚に包まれて、安心したのでありました…。
「南無阿弥陀仏…安らかに…安らかに…」
これからも災害が起きませんように…。