1日1000字チャレンジ#23

「長雨」
こうも雨続きだと気が滅入ってくるものだ。
どこかに出かけようにも傘をもっていると意外と不自由でいっそのこと出かけなくてもできることをしようと思い本をめくっていた。
ページをめくる乾いた音と雨が時折窓をうつ音だけが聞こえる。ニュースを報じているテレビを消してしまえば、まるで時がたつのが遅くなったかのような穏やかな空間になった。
今日はこうしてゆっくりして過ごそうと、お気に入りのクッションを持ってきて読書をしていた。集中できていたからか、気が付けば文庫の半分まで読み進んでおり物語もどんどん面白くなってきていた。
なのに、読むのを中断したのは空腹を覚えたからだった。
仕方がなく冷蔵庫へ向かい買い置きの冷凍食品をあっためて待つ間に、時計を見るとまだ、昼にもなっていない。
テーブルに冷凍パスタを温めたものを並べ、テレビをつける。
ニュースキャスターが雨がこれからも続くことをリポートしており、洗濯物が乾かないだとか、室内干しにする際のコツだとかを紹介している。
カメラに映る街並みは灰色で、歩く人はみんな傘を持っている。足元を気にしているからか、歩く人は下を向きまるで何か良くないことがあったような。不機嫌そうに見えるから、不思議だった。
確かに雨の中歩くときに楽しそうに歩く人は少ないだろうし、少なからず面倒に感じるものだろう。
テレビの中、道を歩く人に大型車両が跳ね上げた水がかかるのをみてやはり出かけなくて正解だった。と思いながら、また読書に戻った。
読み終わってもまだ、夕方にはなっていなかった。
テレビの番組表を見ても特に見たい番組は見当たらない。
仕方がなく、ちょうど天気予報が流れていたので確認する。
地方では晴れになるところも有るのだが、当分この辺りは雨が続くようだった。
一週間は続く予報をみてさすがにこれ以上続くと外出の予定がいつまでも決まらない。
子供だましに、ではあるがティッシュを手に取り、てるてる坊主を作ることにした。久しぶりに作ろうとするとなかなかこれで、頭の大きさというか比重がなかなか安定しない。新円を作るのは不可能でどこかゆがんだ楕円の形になった。
首に輪ゴムを巻いてつるせるところを探す。何とか逆さにならないようにつける場所を見つけたので、重要である顔を書いた。マジックペンが白いティッシュに滲みどこか泣いているような顔になってしまったが、また作りなおすにはティッシュがもったいない。
そうしてつるされたてるてる坊主が恨めしそうにこちらを見つめていた。

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