1日1000字チャレンジ#5

「エゴ」
理想を求めていた。
もっと、こうあってほしい。もっと、面白くて、綺麗で、器用で、天然もので、なんでもできるスーパーマン。
それを求めていた。
失敗するところなんて見たくないし、悩んでいるところも見たくない。
面白くて、みんなが話題にしたくなって、注目せずにはいられない。
だから、
だから、
画面の向こうで危うい綱渡りをする推しを見てイライラしていた。
またゲーム配信?同じゲームばっかじゃ飽きるし、前の企画でも推しは一位になれなかった。
なんか、
「これ、ちがうかも」
指先一つで推しだった人のフォローを外して、広大なネットの海の中新たな推しを探す。
なかなか、理想の推しに出会えない。
「そうだ」
今、デビューしたばかりの人をフォローしてコメントを贈る。
「もっと面白い話題を話して」
「もっと頑張って」
「そういう事は話さないで、危ないよ」
手取り足取りするみたいに自分の思う有名になれる配信者になれるように、一つ一つコメントをした。
「返しの言葉に詰まってたよね。あのコラボ相手嫌いなんじゃない?もう絡まない方がいいよ」
推しがつまづかないように、今まで積み上げたイメージを壊さないように。だって証明するみたいに推しのファンが増えていく。
私の作った理想が評価されている。
「歌、もっと上手になってよ。〇〇なんてすぐに100万再生いってたし、前の歌枠みたいな歌じゃなくて流行っている歌うたって」
そうしたら、評価される。もっと有名になれる。私の作った推しは最高だから。
ある日、推しが無期限休業することになった。
「なんで」
あんなに上手くいっていたのに。ノリの悪いコラボ相手とは絡まないようにいったし、歌だって流行りの歌をすぐに出すようになったし。雑談で広げにくい話題を投げるファンにも忠告して、育てたのに。
出来上がりかけていた。もっと、活動してくれれば推しなら武道館だって夢じゃなかったはず。
『自分はもっと、みんなにとって身近な存在になりたかった。自分の好きなことをみんなと共有して楽しく活動したかった』
後日、彼の所属する事務所から彼の言葉だとして公表された。
『自分の力が及ばずに、失敗した時に幻滅した。とかもっと頑張ってというコメントが目につくようになって最後にはあなたはもっとできるとかいわれて精神的にきつくなった』
「そんなの、言い訳じゃん」
SNSに投稿されるいくつもの彼の言葉だとされる文言に辟易してあっさりとフォローを外した。
「あーあ、また推し探さなきゃ」



////感想////
エゴ、とはどこからがエゴになるのか。
ちょっとずれているかもしれない。でも、誰も他人に対してどうあってほしいと願いながら、自分の事をあっさり蚊帳の外に置いている感もあって
そんないうなら、自分で同じことやって自分で実現すればいいのでは?という話

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