お得意様の宣伝シリーズ① 旧東北大アナーキズム研究会、現〈焼き畑〉コースのDさん 後編
前編の続き
登場人物紹介
G……横浜国立大学都市社会××学科の学科長。
D……東北大アナーキズム研究会の独裁者。(現東北大学教養学部焼き畑コースコース長)
R……都市社会××学科のリアル学生。
何故か慶応大学入学式に出張
D:そんなこんなで年度は変わり……。
G:えぇ、もう年度変わっちゃうのか。
R:今のところ冬におでん配って受験相談して冷笑系とレスバして、アナーキズム研究で微妙に人が集まって、拡大を狙ってフーコーアガンベンでガチ滑りしただけだね。
D:酷いなぁ、合ってるけど。事実は時に人を傷つけるんだぜ。
R:😊
D:4月1日には、何故か慶応大学の入学式に出てた。
G:それはホントに何で?
D:たまたま東京に遊びに来てて、それで慶応大学に知人がいるから、その人と、とにかく仲間を集めなきゃいけないんとちゃうんか、みたいに盛り上がって……。
G:フワフワした空虚な盛り上がりだな。
D:慶応の知人二人と僕の、計3人で慶応大学の入学式に行った。慶応生のうちの一人は、「友達募集中」ってデカデカと書かれたノートを掲げて……。
G:えぇ、怖すぎる……。
R:入学式って、新入生が友達を探すところだよね?そこにわざわざ先輩が乱入して友達探すなよw
G:Dは何してたの?
D:僕は東北大学アナーキズム研究会って書いた即席の赤い腕章をつけて、即席で「東北大学アナーキズム研究会」とマジックで殴り書きしたノートを掲げてた。
G:腕章とかまいてるのフツーにネオナチみたいで怖いよね。
D:そしたら職員に、「こんなことしないでもらえますか。今日は学外の人は来ちゃいけないんですよ。」って注意されて……。
R:あらら。
D:それで、「友達募集中」を掲げていた人もそんな勝気な性格じゃないからしょんぼりしちゃうし、もう一人の慶応生は神速で逃げているし……。
R:もう崩壊してるじゃん。
D:そんな中、何故か僕が、「僕は学外生だけどこの人は学内生ですよ!!問題ないでしょ!!」と身を挺して抗議して……。
G:アツい友情だ。
D:それで職員とレスバしてたら、職員が僕に「その腕章も、学生が職員だと誤解するので辞めてもらえますか?」と言ってきて……。
G:絵にかいたような難癖だ。
D:ごにょごにょ言い合っているうちにめんどくさくなってきて、「入学式じゃない機会にまた来てやるからな!!」と捨て台詞を吐いて、大学から退散した。
R:カッコいい……のか??
D:大学の敷地を出たところで、入学式の新入生を狙っている一群がいたから僕もそこに紛れて、皆慶応のサークルで慶応の新入生勧誘をしているのに、何故か僕だけ東北大学アナーキズム研究会に慶応の新入生を勧誘していた。そしたら、「東北大から来てるじゃん!!」みたいにミーハーのやつに喋りかけられて、滅茶苦茶イライラしたわ。
G:リアクションされてイライラするなら何の為にやってんだよ。
原点としてのメシ配りに回帰する
D:そんなこんなで宮城に帰り、東北でも新歓期に何かして人を集めねばと思い、「桜を見る会」と称して花見をすることにした。
G:しょうもないパロディ😲!!
D:しかし、ただしょうもないパロディして花見するだけでは芸がない、こんなことでは人は来ないと思って、人を集めるために、団子を配ることにした。
R:また食べ物を配るの?!
G:もう「東北大学食べ物配りサークル」みたいになってるよね。慈善事業か何かなのかな。
D:メシを配れば人が来るかな、みたいな考えが僕の根底にあるんだよね。
G:そんな餌付けみたいな論理でやるなよ。そんな甘い匂いにつられてやってくる虫みたいな生き物じゃないぜ。
R:人間ってのはもうちょい理性的な生き物だよ。
D:うん。一人か二人くらいしか新しく来てくれた人はいなかったね。
G:冷静に、東北大学アナーキズム研究会から団子をもらう道理がないんだよな。そんだったら自分で買うし。
R:そうそう、知り合いがやってたら行くかもしんないけど、「アナーキズム研究会」を名乗る知らない人が、団子配ってたとしても行かないよねぇ。
G:そうそう、意味わかんないもん。
D:うーん。
G:それでもメシ配りに固執するなら、せめてアナーキズム研究会が配ってることに意味を持たせたほうが良いと思うんだよね。例えば、「アナーキズム団子」とか言って、串から外してバラバラにして、「これが無秩序だ!!秩序に逆らえ!!」って言って売りつけるとか……。
R:アナーキズムは串の統制を拒否する!!
D:しょうもない……。
G:そもそも何でそんなメシを配りたいの?メシ配り作戦は、クリスマスイブに冷笑系とレスバした時に失効したはずじゃん。
D:いや、そうなんだけど、マジメに読書会やっても、マジメに宣伝しても人来ないし、そうなるとやっぱメシかなって……。僕がメシに弱いんだよね、ごはん食べるの大好きだから。
R:食いしん坊アナーキズム。
三島由紀夫研究会だけ個人的趣味でしぶとく続ける
D:そんなこんなで、何となく思い付きで、三島由紀夫を勉強する会を開催した。
G:それはなんで?
D:僕が三島由紀夫好きだから……。
R:えぇ……。
G:でも、三島由紀夫って、「天皇制アナーキズム」と評されることもあるよね。天皇というシンボルを置いておいて、その下で勝手にみんなで自由に争い合うみたいな。そういう意味で言うとアナーキズムとも無関係じゃないんじゃないかな。
D:いや、そういうのは関係ない。どうせアナーキズムなんて勉強しても人なんて集まらないんだからとやけになって、フツーに僕が好きなことをやろうと……。
G:えぇ……。せっかくフォローしたのに……。
R:研究会の私的利用だ……。
D:まぁ、アナーキズム研究会で三島由紀夫なんて読んでても、案の定誰も興味を持ってくれず、あんまり人は集まらない。
R:で、またすぐポシャっちゃうんだ。
D:いや、三島は僕が個人的に好きという理由で、全く人が集まらなくても一向にポシャらず、しぶとく今もやり続けている。
G:個人的理由過ぎる……。
D:他にもボチボチ読書会はやってるんだけど、やっぱ今時一般学生向けに、しかもちょっと捻った政治系の読書会なんてやっても人なんて集まらないんだよなぁ。
G:まぁねぇ。環境問題研究会とかジェンダー問題研究とかだったら流行でもあるし、まだ人が集まるかもしれないけど……。
D:でも、そういうのだったら僕が開く意味はないからなぁ。
G:そうねぇ、それはそうだよね。
似非オープンキャンパス闘争、太陽に敗北
R:最近だと、"似非オープンキャンパス闘争"をやっていたよね。
G:なんかやってたね。
D:7月27日28日に東北大学がオープンキャンパスをやってたんだよね。それに”対抗”して、東北大学アナーキズム研究会もオープンキャンパスをやるぞ!!と……。
G:大学の管理化とか言論弾圧に対抗するってのは分かるけど、"オープンキャンパスに対抗"って何だよw
D:大学がこういうデザインのオープンキャンパスのポスターを作っていて……。
D:アナーキズム研究会は、東北大にはない「教養学部」を僭称して、似非オープンキャンパスの宣伝ポスターを作った。
R:大学のオープンキャンパスはなんか清潔感があるけど、アナーキズム研究会のオープンキャンパスは、良い意味で胡散臭くてイイね。
G:"良い意味で胡散臭い"って初めて聞く日本語だな。
D:まぁその"良い意味で胡散臭い"ポスターを大学キャンパス中に徹底的にバラまいたんですが、学生は試験中だし、東北大学がどんな大学か知りたくてオープンキャンパスにくるようなまっすぐマジメな高校生は、"似非オープンキャンパス"に興味を持ってくれはずもなく……。
G:まぁ確かに。
D:あと、この時死を予感させるような、殺人的な暑さだったんだよね。宣伝のビラ貼りはそこそこ頑張ったものの、外に出ているとクラクラしてきて、あんまり何もできずに終了した。
R:似非オープンキャンパス闘争、太陽に弾圧されて終了、と。
D:😢
お得意様募集中!!
D:まぁ、こんな感じのことをここ半年ちょっとはやってました。
R:なんか全部失敗してるよね。やってることも全部しょうもないことばっかだし。
D:そんなひどいこと言わないでよ~😢何とか言ってよガクえもん~😢
G:まぁ実際Rの言う通りだよね……。
D:😿
R:最後はちょっとフォローして終わった方がいいんじゃない?「お得意様の宣伝」とか言ってるけど、ネガキャンにしかなってない感があるよ。
G:そうね。まぁ始めに言った通り、僕とDは、Rの言葉を借りれば、「中二病逆張り政治」として問題意識を共有しているわけだけど……。
D:それにしても、Rってホントに酷いこと言うな。
G:僕としては、Dの、どうしようもないくらいに何にも依拠できないけど、それでも一応何かに爪痕を残そうとしているその「不毛さ」が大事だと思うんだよね。
D:ガクえもん~😿
G:抵抗する運動を構想する際も、その根拠として、「言論の自由」や「学生主体の大学」みたいな、既存の理念に依拠したほうがやりやすい。けど、Dの試みっていうのは、依拠する理念も何も無ければ、依拠する界隈も殆どない、ほぼ何もないところでやってるわけだよね。これこそが、あらゆるイデオロギーが潰れ、あらゆる運動が潰された地平の一般的なリアリティだと思う。少なくとも、俺が都市社会××学科で想定している地平は、そういう地平だ。
D:そう!!そうなんだよ!!僕の活動の意義をよく分かってる!!流石学科長!!
R:特に、コロナ以降しか知らないような世代は、本当に何もない、マジで虚無っていうところこそがリアリティだよね。この「不毛さ」にこそ、現代的なリアリティがあると。
G:そうそう。既成のあらゆる理念に依拠できないという感覚があるからこそ、何も出来なくて、そうするとメシとかに飛びついちゃうと思うんだよね。まぁメシ配りをしちゃうこと自体は救いようないんだけど…。
D:😢
G:そこで学生運動ノスタルジーに浸るよりは、まだメシに飛びついている方が良いと思う。その滑稽さ、不毛さこそを、都市社会××学科は肯定する。滑稽にならざるを得ない、不毛にならざるを得ないリアリティが、俺らを覆う現実の絶望なはずなんだ。
R:まさかのメシ配り肯定の観点が……。
D:そうそう。無意味な団子を世の中に投げつけることで、この世界の虚無を象徴していたんだよね。そういう高度なパフォーマンスだったんだよね。
R:なんか後付けな気がするけど……。
G:とにかく、都市社会××学科は、不毛でも、滑稽でも、相手にされなくても、虚無の中で、頑張って頑張ろうとしているそこの君を応援してます!!お得意様募集中!!
(おわり)
宣伝
旧東北大アナーキズム研究会、現東北大教養学部〈焼き畑〉コースの連絡網に入ろう!!
9月中旬には〈焼き畑〉的な問題意識から、ポストモダン思想詰め込み合宿をするらしい。詳細はこちらから。学科長も多分部分的に参加します!!