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小学2年以来40年ぶりの再会


第5話:「展示会と心の決断」

陶器の展示会当日、カフェは美咲の作品を見たいという人々で賑わいを見せていた。彼女の作品に対する温かい言葉や、カフェの雰囲気を褒め称える声が交錯する中、美咲と浩司は忙しなくも充実感に満ちた時間を過ごしていた。この日のために一緒に準備を進めてきた時間が、二人の絆をさらに深めていたことを、改めて実感する瞬間だった。
しかし、展示会の成功と賑わいの中にあっても、浩司の心は静かな嵐を抱えていた。彼が美咲に伝えたいと思っていた「大切な話」とは、彼らの関係に対する彼自身の決断だった。展示会がひと段落した夕方、彼は美咲をカフェの一角にある小さなテーブルへと誘った。そこには二人だけの空間が広がっていた。
「美咲さん、今日は本当に素晴らしい一日だったね。あなたの作品がこんなに多くの人を幸せにする姿を見て、私も心から嬉しく思うよ」と浩司は言葉を切り出した。美咲は微笑みながら、「浩司さんのカフェがあったからこそ、こんな素敵な展示会が開けたんです。ありがとうございます」と答えた。
しかし、その後の沈黙は、二人にとって重い意味を持っていた。浩司は深呼吸を一つしてから、言葉を続けた。「美咲さん、僕たちのこの関係について、真剣に考えたんだ。僕たちの間には特別な絆があることは確かだけど、僕たちにはそれぞれ家族がいる。この感情を大切にしながらも、僕たちはそれぞれの家族を第一に考えなければならないんだと思う」
美咲は、浩司の言葉を静かに聞き入れながらも、彼の決断を予感していたようだった。彼女自身も、内心では同じ結論に達していた。美咲は穏やかに頷き、「浩司さん、その通りですね。私たちの感情は変わらないけれど、大切な人たちを傷つけるわけにはいかない。この関係をこれ以上進めることはできない」と語った。
二人は、互いの手を軽く握りながら、今後は友人として、お互いの家族を尊重しながら接していくことを約束した。その瞬間、彼らの間には切なさと同時に、深い敬意と理解の感情が流れていた。
展示会の終わりとともに、二人の心の中には新たな決断が生まれた。彼らはお互いに対して深い愛情を抱きながらも、その感情を超えた場所で、互いを思いやる道を選んだのだった。


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ならちゃん
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