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いろの秋

 秋になると、赤や黄色や茶色やカーキといった色の服を着た人が街中に溢れかえる。普段は雑然とした街中が、その季節だけ森にいるように居心地がいい。僕は秋の色が大好きだ。
 秋の自然の色はとても美しい。日差しに反射して燦燦と光り輝くイチョウの木や、真っ赤に燃え上がる紅葉の葉っぱは一つの芸術ともいっていい。僕もついついこういう色の服を着たくなる。
 なぜ、秋だけの美しさがあるのか。僕は秋にどことなく儚さがあるからだと思う。秋の次には冬が来る。冬になると、あれだけ綺麗だった葉っぱは見る影もなくなり、禿げた木だけが寂しく残る。だからこそ、そんな寂しい冬の前に、自然が残り一杯の命を精一杯燃やして美しく咲き誇る秋に私たちは感動するんじゃないだろうか。そうした秋に漂う儚さは、生命の始まりを謳歌する春とはまた違った魅力がある。
 ギラギラとした夏としんしんとした冬の間にある秋。気づいたら冬になってしまっているとても短い季節だが、私たちはそれを好んでやまない。それは秋の一瞬だが燃え上がるような情熱が、私たちの目に鮮やかで美しく映るからだと思う。儚いからこそ、美しい。僕は秋の色が大好きだ。

せきしん

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