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みけこの散歩7(一方通行のこと)
車で息子が住む家を訪ねた時のこと。
都会の住宅街、細い道が入り組んでいて、明るいうちでも方向音痴の私には大変で、あんまり親切に教えてくれないカーナビと、娘のスマホのナビとの合わせて技でやっとの思いで辿り着いた。
そして帰り、来た道は一方通行で戻れない。
とっぷり日が暮れて暗くなってしまった、はじめましての道。
家やマンションがぎっしり建ち並ぶ細い道で迷子。
カーナビのお姉さんにも分からないのか、なんだかずっと黙ったまま。
えーと?どっち?ここどこ?
こっち方面に行けば帰れるよね?
標識を見落としていた。
ヨロヨロとあやふやな感を頼りに進むと突然前から車が来た。
その後ろにも続いて2、3台…
え、なんで?
正面から向き合ってしまった車のドライバーの眉が怒っている。
一方通行の逆走に気付かずに細い道を進んでしまっていた。
助手席の娘とすくみ上がる!
塀の上の一本道を歩いていた猫が突然、ここいら一帯が縄張りのボス猫と出くわしたがごとく。
私が下がるのよね?
ここをバックでどこまで下がればいい?
車の運転が好き!とか言ってたクセに体が動かない。
すると、そこにたまたま居合わせた、その道に面したマンションの住人であろう男性が、救いの手を差し伸べてくれた。
なんと、私の車の直ぐ横のマンションの駐車場入口にあったターンテーブルに誘導してくれて、くるっと向きを変えてくれた。
ほんの短い出来事。
魔法みたいだった。
夜の東京中目黒、住宅街に迷い込んだ大阪ナンバーの黒猫1匹。
足がすくんで動けなくなったその脇をひょいと抱えて向きを変え、逃げ道を作ってもらえた。
中の母猫と子猫は、ペコペコと何度も何度も頭を下げて…、でもさっさと行かないと余計に迷惑だろうから、出来るだけ機敏に素早く車を出した。
もう何年か前の事だけど、あの時助けてくださった方、ありがとうございました。
ご恩はずっと忘れません。