商法!?:法制審議会商法(船荷証券等関係)部会①これまでの議論の簡単な経緯
本稿のねらい
2022年2月14日開催の法制審議会総会において、諮問第121号に関して「商法(船荷証券等関係)部会」を新たに設置し、そこで船荷証券の電子化について審議されることとされた。
その趣旨は次のとおりである。
本稿執筆時点では、2023年8月30日付け第11回会議まで開催されており、既に要綱案の取りまとめに向けた検討が進められている(既に中間試案も公表済み)。
そこで、本稿以下では、船荷証券の電子化についてまとめることとする。貿易関係のルールは、国内法もさることながら、国際的なルール(条約等)を把握しなければならない点でとっつきにくいが、そのあたりわかりやすく説明できるよう努める。
本稿では、船荷証券の電子化に関するこれまでの議論の流れなどについておさらいすることにする。
これまでの議論
以下では、船荷証券の電子化に関する具体的な内容には特段踏み込まず、単にこれまでの議論の経緯をまとめているだけである。
(1) 1st Phase: 2021年規制改革推進会議
法制審議会第194回総会の金子民事局長の発言にあるように、もとは2021年規制改革推進会議「投資等ワーキング・グループ」第7回(2021年1月19日開催)(第7回会議)において船荷証券の電子化について議論された。
これを受けて、次の2021年6月18日付け「規制改革実施計画」に繋がるのである。
この第7回会議においては、非常に興味深いやり取りがあったため、かいつまみながら紹介する。
たしかに、堂園審議官のいうように、船荷証券の電子化に関してUNCITRALのモデル法(UNCITRAL Model Law on Electronic Transferable Records)はあるものの船荷証券そのものに関する条約等の共通ルールではなく、一般的な「電子移転可能記録」に関するモデル法に過ぎず、国際的な共通ルールは存在しないとされていることから、仮に世界に先駆けて(実はバーレーンやシンガポール等では既にルール化されているらしい)我が国の法律(商法が適切なのかどうかは別論)で船荷証券の電子化を推し進めても意義が乏しいようにも思われる。
しかし、いち早く国内法として船荷証券の電子化を整備した国だからこそ、他国やUNCITRALのような国際的な機関に対して発言力や交渉力を持てるのではないだろうか。河野デジタル大臣は、「リーダーシップを取っていく」という発言からもわかるように、法務省には、国内法の整備を足掛かりとして、国際的な議論を進めてほしいと意図していたはずである。
それに対し、「改正はしたけれども、実際には国際的にそこの部分が認められませんということを、法改正をした我々がそういった周知をするということはそもそもどうなのだろう」などと意味不明なことを言っており、国語力に難があるということはないはずだから、よほど早急に国内法の整備をすることが嫌だったとみるほかない。
国際的な議論を進めるためにも、ひとまず国内法の整備を行うこと、国際的な枠組みができるまでの間、一定のリスクがあることを承知の上で、電子化された船荷証券を利用することは特段妨げられないことを周知すれば十分である。
(2) 2nd Phase: 公益社団法人商事法務研究会
議論の場所は公益社団法人商事法務研究会へと移された。
そこでは「商事法の電子化に関する研究会(船荷証券)」が開催され、2021年4月14日に第1回会議が開催されたのを皮切りに、2022年3月23日に開催された第10回会議まで約1年間に及ぶ議論が行われた。(⇨報告書)
(3) 3rd Phase: 法制審議会-商法(船荷証券等関係)部会
上記商事法務研究会での報告書が公表された直後の2022年4月27日、法制審議会-商法(船荷証券等関係)部会の第1回会議が開催された。
上記のとおり、本稿執筆時点では、2023年8月30日付け第11回会議まで開催されており、既に要綱案の取りまとめに向けた検討が進められている(既に中間試案も公表済み)。
中間試案に対するパブコメ手続も実施され、2023年5月12日期限であったところ、その直後である同月31日に開催された第10回会議ではパブコメに寄せられた意見の概要がまとめられていた。
以上
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