本稿のねらい
過去3回にわたり紹介したとおり、2023年8月31日、経済産業省及び金融庁はそれぞれ「令和6年度税制改正要望」を公表した(経済産業省・金融庁)。
そこで挙げられている税制改正要望事項のうち、筆者の興味関心に照らし次の6つを紹介することを予告していた。
本稿では、No.5の「暗号資産の期末時価評価課税の見直し」(本税制改正要望事項)について説明する。
税制適格ストックオプションの利便性向上のための見直し
エンジェル税制の更なる拡充
オープンイノベーション促進税制の延長
パーシャルスピンオフ税制の恒久化
★暗号資産の期末時価評価課税の見直し
種類株式に係る課税上の取扱いの明確化
例によって、まずは暗号資産の期末時価評価課税の簡単なおさらいから始め、その後本税制改正要望事項の説明に移る。
┃ 過去記事
現状:内国法人が保有する暗号資産の期末時価評価課税
内国法人が保有する暗号資産のうち、期末時価評価課税がされてしまう暗号資産は、「市場暗号資産」とされている(法人税法第61条第2項)。
条文は下図のとおりである。
課税関係の詳細は、国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」34頁を参照のこと。
ここでいう「市場暗号資産」に何が該当するのかについて、国税庁の「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて(情報)」が参考にはなるが、明確な指針とはいいがたい。
なお、令和5年度税制改正により、法人税法第61条第2項にある「特定自己発行暗号資産」に該当すれば、期末時価評価課税の対象外となるよう手当がなされた(同法令第118条の7第2項)。
本税制改正要望事項
令和5年度税制改正により手当がなされたのは、あくまで自己発行であり譲渡制限等の要件を満たす「特定自己発行暗号資産」のみである。
そのため、自己発行以外の市場暗号資産を継続して保有し、それによりブロックチェーン技術等を研究開発する内国法人にとって、期末時価評価課税がなされてしまうという状況になっている。
そこで、このようなブロックチェーン技術等の研究開発やその起業を促進するべく、発行者以外の第三者が継続的に保有する市場暗号資産について、期末時価評価課税の適用対象外とすることが要望されている。
以上