助手席の異世界転生
いそいそ今月の雑誌を広げる。アニメ雑誌購入はこの年では気を遣う主に私が。
「意味深な」
私は助手席の奴に雑誌を渡す。
「それ以上話すなよ、トワ」
読み始めた彼の持ち物の長い棒が、車の天井に突き刺さる。
「杖刺さってる」
彼は無視だ。満足げに読み終えた彼が此方を見る。
「来月も約束されたな、連続掲載大丈夫か先生」
「私、来月上京するの」
「ほう」
「発売日に読めちゃうんだな、これが」
隣に座る彼は目を見開く。
「やったな、トワ!地方都市は発売日に読めないからな」
「しかし、残念ながら私はここに居ないのですよ」
「どういうことだ」
「だってアンタ、私の助手席にしか召喚できないでしょ?」
「クソが」
彼は異世界転生した主席魔法使いだった。
「トワの座標さえ特定出来たら、読みに行く」
「あんたも好きねえ」
「それで座標は」
「ヤダよ教えない、異世界に拉致される」
彼はにっこり笑った。
「連載終了するまでしない。あと2年はゆうに無理だ」
「同感」