沁(し)みる夜汽車「息子と車窓の風景を~江ノ島電鉄~」観た
鎌倉と藤沢を結ぶ江ノ電。毎年11月11日の11時12分、藤沢発鎌倉行き。江ノ電が大好きだった息子が見た車窓からの景色を毎年見続ける方がいます。新田さん67才。
息子が亡くなったのは20年前。
支えになっていたもの。それは息子と最後に江ノ電に乗った思い出。
決まって乗るのは運転席の後ろ。
毎年変化していく景色を息子に報告する。
新田さんと江ノ電の付き合いが始まったのは子供が16歳になったとき。病状が悪化してあとわずかだと宣告。
息子にできることは何かないか。それは運転手になりたいという夢を叶えることだった。
やりたいことを生きてるうちにやらせようと思いましたね。最後にやり残したなっていうことで終わりたくないなって思ったんです。私も。
ボランティア団体に協力してもらい、いくつかの鉄道会社に問い合わせた。しかし、ハードルは高かった。免許がなければ運転はできない。そんな中、江ノ電だけが実現に向けて動いた。
当時総務課長だった楢井さん。反対意見を説得し、実現に向け奔走した。
当時私は41歳ですけど、何とかしなきゃいけないと情熱もいっぱいあって。できるかどうかわかんないけどとにかくやるんだと法律や規則を1から必死に見直しました。
すると、ある方策が浮かんだ。
車庫への引き込み線であれば運転席に座ってもらうことができる。徹底的な安全管理をした上で息子さんに運転をしてもらった。
4日後、旅立った。
息子のためにここまでしてくれる人が周りにいるんだなっていうのがまずありがたいと。
ありがたいというか、そういう人たちが本当に実際にいらっしゃったんだと。
そんなに亡くなった感覚がない。亡くなって無いことはないですけども。寂しいとは思ってないですね。