金融機関のパートナーセールス💰
パートナーセールスアドベントカレンダー2023の5人目を担当します!
パートナーサクセスの宮下です。
これまで、大企業とスタートアップ、ベンダーとパートナー、それぞれの立場でパートナーセールスに携わってきましたが、今回はアドベントカレンダーへの寄稿ということで、なるべく他の方々と被らないテーマで、金融機関のパートナーセールスをご紹介します。
※アドベントカレンダーのリンクはこちら
金融機関のパートナーセールスといっても様々ありますが、今回は「銀行 x 保険」という金融機関におけるパートナーセールスの代表的な事例をご紹介します。レガシーな企業間のパートナーセールスですが、歩んできた歴史から学ぶことはたくさんあると思います。
まず前提として、銀行が保険商品を販売することを「銀行窓販」と言いますが、私自身この「銀行窓販」の業界で約10年、銀行への保険商品の導入、銀行への出向、銀行員の保険販売の支援などの仕事に携わってきました。
銀行における保険販売の歴史
銀行で保険を販売できるようになったのは、2007年12月〜(2001年4月より段階的に取り扱いできる商品が増え、2007年12月に全面解禁)で、それ以前は銀行では保険を販売をすることができませんでした。
現在では、さまざまな種類の生命保険や損害保険が銀行から加入できるようになっています。
段階的な規制緩和の背景
全面解禁まで段階を踏んだのは、銀行が保険代理店になるということは、単に全国に23万ある保険代理店が1つ増えるというものではないからです。
銀行は預金者という膨大な見込み客リストと、他の企業とは比較にならない圧倒的な信用力を持っています。これは保険会社や他の保険代理店からすると脅威です。
「顧客が銀行に奪われるのではないか?」と、保険業界もかなり警戒していました。全面解禁した現在も、優越的地位の濫用を防ぐために融資先(従業員も含む)には保険が販売できない等、様々な規制が敷かれています。
また、銀行側にとっても、十分な保険販売のスキルや知識がないまま全面解禁を迎えると、苦情等に繋がる可能性もありますので、慎重になっていました。※残念ながら最近でも外貨建て保険の販売を巡ってトラブルが起きています。
双方にメリットがある銀行x保険のパートナービジネス
このように様々な課題もある保険の銀行窓販ですが、銀行、保険会社双方に大きなメリットがあります。
まず保険会社のメリットは、自社ではリーチできない層に保険を販売できるという点です。保険会社や販売チャネルにもよりますが、自社専属の営業社員の顧客層は主に20〜40代の現役世代ですが、銀行リテールの主たる顧客層は60代以上の退職者層です。金融資産の70%近くを60歳以上が保有していることを考えると、非常に魅力的なマーケットですので、この層を獲得できれば経営にも大きなインパクトを与えます。事実数年前に、銀行窓販を起因として、第一生命が日本生命の保険料収入(事業会社の売上にあたる)を抜いたことが話題になりました。当然、各保険会社がこぞってこの銀行窓販に参入します。
次に銀行側のメリットは、手数料収入です。長らく低金利が続き、貸出等で稼げない中、保険の手数料収入は魅力的です。一時払保険のアップフロントの手数料収入だけでなく、月払や年払であれば、10年前後継続して手数料収入が入ってきます。
後発で参入した外資系生保が成功した理由
私が在籍していた外資系生保は、2010年に銀行窓販に参入しましたが、かなり後発の部類で、銀行に商品を取り扱ってもらうことにとても苦戦しました。プロダクトに大きな差がなく、どの銀行も各カテゴリーの商品ラインアップは既に揃っていたからです。この状態で新規のプロダクトを取り扱ってもらうことは容易ではありません。では、どこに突破口を見出したのか?これは大企業、スタートアップ問わず、パートナーセールスをされている方のヒントになると思いますので、今回の伝えたいポイントです。
プロダクト+αの価値提供
例えば、プルデンシャル生命等の外資系保険会社の営業と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?営業社員の営業力をイメージされる方が少なからずいらっしゃるかと思います。
後発だった外資系生保が+αで価値訴求したのが正にこの部分でした。商品導入と人材の出向をセットにして価値訴求したのです。
銀行は膨大な見込み客は持っていますが、保険販売のノウハウは持っていません。そして、これとは真逆なのが保険の営業です。保険の販売に関しては高いセールススキルを持っていますが、見込み客が見つけられないのです。結果、退職せざるを得ない方が非常に多い職種です。保険販売において、銀行員と保険営業はお互いに足りないものを補完することで、大きな成果を挙げることに成功しました。
それまで見込み客の発見に苦労していた保険営業は、水を得た魚のように磨いたセールストークを披露し、それを横で聞きながら銀行員が学んで身につけていく。人材の出向は教育の面でも大きく寄与し、結果、現在では多くの金融機関が保険会社から出向者を受け入れています。
プロダクトプッシュに終始しがちなパートナーセールス
パートナーセールスの勉強会や商談では、プロダクトやサービスの魅力を伝えることに集中するあまり、一方的なプロダクトプッシュに終始しがちです。これだと他にもたくさんの商材の話を聞くセールスの頭には残りませんし、自社のことしか考えていないと思われてしまう可能性もあります。
今回ご紹介した人材の出向は一例に過ぎず、ライトなところでは、その商材を扱うことで、アップセルやクロスセルに繋がる、という価値訴求も有効です。ベンダーとパートナーが双方のビジネスを成長、成功させるという姿勢は、当社が大切にしているパートナーサクセスの概念そのものです。
まとめ
今回は金融機関におけるパートナーセールスの一つの事例をご紹介しましたが、長く続くパートナーセールスは、ベンダー、パートナー、それぞれの顧客にメリットがあることが前提になります。自社(自分)のことしか考えていないか?顧客をおざなりにしていないか?戒めも込めて常に意識したいと思います。
また、今回ご紹介した出向スキームは、効果的なセールスイネーブルメントと言えると思いますが、長期の出向によるロイヤリティの低下や、評価者が外部にいることによる評価の難しさ等、無視できない副作用もあります。この辺りはまた別の機会に。
皆様のお力添えをいただきながら、パートナービジネス(パートナーセールス/代理店販売)とセールスイネーブルメントを掛け算したPartner Sales Enablementの構築を実現していきたいと考えております。
今後ともよろしくお願いいたします。
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