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sorasagano
山田君 不動産で世を渡る(プロになる)※平成バブル 曙橋最終章VOL4
曙橋300坪の取引は終わった。売った物件は引渡ししたら途端に興味がなくなる。俺は相変わらず都内の物件を追っかけていた。
そんなとき久しぶりに曙橋に用事ができた。リノベーションできそうな賃貸マンションの案件があったからだ。
そうだあの曙橋の現場はどうなっているんだろう。ふと気になって見に行ってみた。建物は解体中であった。仮囲いで囲まれている。仮囲いの中では重機が大きいハサミでコンクリートを鋏んで粉砕している。それを職人が同じく重機でダンプの荷台に積んでゆく。
いよいよ始まるのか。当たり前の風景に何の感想もない。
しばらくすると、その土地はコインパーキングになっていた。
買主の倒産のうわさを聞いたのはそのあと少ししてからである。
唖然とした。ババ抜きのババを掴んでしまったのだろうか。やはり解体して転がす予定だったらしいが上手くいかなくて、他のプロジェクトの負債もあり行き詰まって資金ショートしたらしい。
「頭と尾っぽはくれてやれ。」相場の格言で相手の取り分も残して三方良し。売り手よし、買い手よし、世間よし。
俺のこの仕事は買い手良しじゃなく、世間にも良しじゃない。単なるチキンレースだ。
ただ、
これが資本主義なんだ。明日は我が身なんだ。食われないためには食う側に回らなければだめなんだ。
頑張れ俺。どんな方向へ導かれていくんだ。