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山田君 不動産で世を渡る(プロになる)※平成バブル 曙橋 売買契約VOL3

俺が手掛けている曙橋の購入の検討をしている会社が買付証明をもってやってきた。俺は買付証明を受け取った。そしてその会社の社長は帰っていった。
俺は買付をもってデスクに戻った。買付とは相手の購入意思を示した書類だ。その書類はA3版のぺらイチである。日付と価格と購入希望物件が記入されている。その他はもろもろの購入するための条件である。

買付証明はこの条件なら買いますよっていう書面で、受け取ると他社には物件紹介を行わないという暗黙のルールがある。所謂売り止めというやつだ。
法律的には拘束力があるのだろうけど、破棄や反故にされても費用と時間の無駄なことがあるため裁判で争った事例を俺は知らない。
したがって買付の受領で一喜一憂することはない。契約をまいてなんぼだからだ。

今回の買付には購入金額8.5億円、古家つきと書いてある。つまりは買主が解体するということで現況有姿売買ということだ。また確定測量が不調のままだと8.4億円と書かれていた。
この買付の有効期限は今日から30日以内と記されている。

収支を考えると取得費6.9億円。登記費用 立退き費用 仲介手数料などを含め現在までの原価は7.3臆円だ。仮に8.5億円で売却した場合は1.2億円の利益になる。俺と部下が2人で実行した物件で約半年でこの利益は売却に十分値すると判断した。

そして俺は売買契約を行った。部下は確定測量が完了すれば1千万円の売値差があるためこのバッファを基に隣地に通い詰めてついに立会証明を取得した。

しかしその会社は8.5億円で取得して事業化できるのであろうか。この取引は開発しないでの転売のため充実感が湧かない。しかし会社は思わぬ利益により喜んだ。このころから誰も俺のやることに意見を言わなくなり、ますます精神を削る戦いに入り込んでいくことになる。



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