山田君 不動産で世を渡る※宮城県松島のホテルで大失敗VOL12 自然由来
俺は再び松島に向かった。建設会社の社員と同じ新幹線に乗っている。購入時の予算は概算のため、正確な実行予算を導き出すためだ。
既に松島町は前回の調査で経験済みで、俺のなかは日本三景の美しさの鮮度が落ちていた。俺とは反して同行した建設会社の社員は何かうれしそうである。
本来の目的である解体工事の下調べに、日本三景のおまけについてきたのだからまんざらわからないでもない。
午前11時ごろに松島の物件に到着した。出迎えてくれたのは売主が常駐させていた設計士である。東京から買っていった菓子折りを渡した。
設計士は、松島から解放される喜びからか愛想がよい。結構饒舌である。
設計士は館内を隈なく案内してくれた。また設計図書の写しも持っていた。ホテルの再生を目途に送り込まれたが、資金が続かないで放置された感じである。俺は残置物の写真を撮りまくっていた。以外と価値のありそうなものはないんだなあ。当然倒産したときに持ち出されている。
鬼怒川や水上で落書きだらけになった廃墟ホテルとは違う。まだ再生は可能な状態だった。ただ俺の会社はホテルを経営する能力も資金もない。解体して更地で売却の方向にほぼ決まっていた。
売主の設計士に一通り案内され、当社側の建設会社社員による質疑応答も終わり、内見は終了した。
土壌調査は明日から3日間によって行われる。設計士は了解してくれた。
俺はその晩に設計士をホテルの食事に誘った。
この物件の出口をどうすればいいのか、最善の方法のヒントを聞き出したい。
夕方の6時に彼は来てくれた。面白い案を携えて。俺は希望が見えたと舞い上がった。
彼との食事を終え、俺は部屋に戻った。同行した建設会社社員は松島の夜を堪能しているようだ。
俺は風呂に入って一日を終えた。