1789−バスティーユの恋人たち−

宝塚歌劇星組公演『1789−バスティーユの恋人たち−』を観てきた。色々な想いがあふれ、涙を流しながら観た。瞳が潤むではなく、涙がつつーっと頬を伝って流れた。

『1789』とは
2012年フランスにて初演、ドーヴ・アチアとアルベール・コーエンによるフレンチ・ロック・ミュージカルである。日本初演は龍真咲主演の月組、その後東宝版が帝劇で2度上演された。今回、星組で再演されている。

月組版ではトップ娘役の愛希れいかさんがアントワネットを演じた。主人公のロナンはオランプと想い合うのであるから、宝塚の理ではトップ娘役はオランプを演じるのが筋である。いやいや、『1789 』のヒロインは元々オランプなのだ。おかしいではないか。

この頃の私は、東京に引っ越してきて2年ほど。子供の手も離れ、都会を楽しんでいた。展覧会に行ったり、お芝居を観たり。ある時思い立ち、当日券に並んで雪組の『ベルばら』を観た。観てしまったのだ。深みにハマらずとも、これを機に元々好きだった宝塚にジワジワと吸い込まれていった。今の言い方で言えば“推し”もなく、ゆるゆる観ていたのだが、知り合いから『1789』の愛希れいかを観るのだ!と激オシされた。これが『1789』との出会いだった。

帝劇版、帝劇再演も観に行った。こちらのヒロインはオランプ。そうだよ、これだよ。
私は宝塚での再演を願った。頼む、礼真琴で再演してくれ!そして、トップ娘役はオランプを!


愛希れいかさんは素晴らしい娘役だった。退団しても、才能を遺憾なく発揮し、数々の大舞台で主演している。当時、オランプを演れば素晴らしいオランプになったに違いない。しかし、まぁ組の人事とか色々あったのだろう(何せ月組だし…)きっと色々な事を言われ重い負担はあっただろうが、愛希れいかさんのアントワネットは凄かった。気品もあり可愛さもあり。久しぶりに月組を観た私は、組内の路線も何も分からずに観たのだが、この時のキャスティングは、これしかなかったのだろうと思わせられた。
宝塚の理を置いておけばね。


楽曲にハマっただけではなく、私にとって『1789』は推しとの出会いだった。推しの代表作である『1789』をリアルタイムで生で観られたことはこの上ない幸せだった。
推しの代表作は再演してほしくないと言うのも分からなくはないが(総じて再演は比較の花が咲く)、それでも再演してほしかった。


そして、それが実現した。

人気の演目、人気の礼真琴、東京では取れないかも…私は勝負に出た。ムラ遠征だ!家族に恐る恐るお伺いをたて、友の会、阪急夢組と申し込んだ。何とか友の会2次で当たりを引き当て、新幹線も取り(日帰り)、推しの退団以来のムラ遠征をすることになった。

東京でも何とか観られないかと、友の会、生協と申し込んだ。友の会には振られたが、何と生協から舞い降りてきた。よしよし!

よしよし!だったのよ。だったんだ。噂は出ていて、ちょっとまずいんじゃないか、ムラの予定通りの開演は出来ないのではないかってね。でも、初日の開演時間を遅らせて始めるとアナウンスがあったので、ホッとしていたところに、翌日からの休演。その期間が延び、私のとても良席だったチケットは消えてなくなった。


東京は予定通り始まり、順調に進んでいる。しかし、いつどうなるか分からない。だってムラの休演だって、当日発表だったし。観劇日の朝もソワソワして落ち着かなかったし、公式からのお知らせが来て、心臓が凍るかと思った。幕が開くまで分からない。


私の不安は暑い夏の空に飛んでいき、無事に『1789』を観ることができた。無事に幕が開いたんだ。それだけで私は泣ける、泣いていい。涙が流れるほど泣いた。


この涙にはもう一つの意味がある。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?