招かざる訪問者との物語④
【懐かしいA大学病院】No4
目指すA大学病院は、都内中心部に位置し最寄り駅は、電車が複数の路線にまたがり交通アクセスの良いところにある。駅から徒歩5分でA大学についた。病院前の歩道は以前と変わらず沢山の人が行き交っている。
天高く聳え立つ大学病院は、幾つもの病棟からなる建物の集合体で、昔と変わらず私を出迎えてくれた。
病院総合受付にて診察券を再発行し紹介状と共に消化器内科受付にて受付を済ませた。程なくして看護師さん名前を呼ばれ、食事を摂っていないことを確認され、直ぐに血液検査とMRI検査を受けるように指示された。本日の検査結果も併せて夕方に膵臓専門医の診察を受けることになった。血液検査もMRI検査も手際良く進み病院到着から3時間程で膵臓専門医の診察を夕方外来待合室で待った。都内中心部にある大きな大学病院、1日に千人を超える外来患者を短時間に効率良く検査、診察、治療をする仕組みが隅々まで行き届いている。先日訪れた近隣の大学病院ならMRI検査も1ヶ月待ち、更に専門医の診察には一週間を要する対応との違いに、驚くと共に、ここに来て良かったと安堵した。
消化器内科外来診察室は、8部屋に区切られていて、順番に患者が呼ばれ、診察を終えて去っていく。昼過ぎに来た時は、外来患者で混み合っていた待合室も、全ての患者の診察が終わり、残すは私1人になっていた。時間は18時を回ろうとしていた。ようやく名前が呼ばれ診察室に入った。
A大学病院消化管内科膵臓領域教授のI教授は、紹介状と検査所見を確認しながら、的確な問診を行い電子カルテに入力していく。先程検査したMRI画像と10年前にこちらで行ったMRI画像や紹介状と共に持参した消化管エコー検査画像を見比べながら膵臓の腫瘍について確認していく。先程採った血液検査結果も精査しながら、診断を検討頂いた。
I教授は、私が製薬メーカー勤務と言うことで、少し詳しい専門用語を交えて説明をして頂いた。
私の病名は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)殆どは良性ではあるが2、3割の確率で膵臓癌もり、また、癌化しやすい腫瘍だそうだ。念のため超音波内視鏡など更に詳しく検査しましょうとのお話だった。50代前半のI教授は、膵臓専門医としての高い経験と知識を持ち、誠心誠意診察されていることが、その言動から読み取れた。
来週月曜日に超音波内視鏡検査、更に翌週に腹部エコー検査と診察を予約した。電子カルテに入力しながら「しっかり検査していきましょう。大丈夫ですか?」と私に視線を向けた。
「はい、大丈夫です。宜しくお願いします。」
全てをお任せする気持ちで頭を下げた。
帰りの電車に揺られ今日一日の慌しい出来事を振り返った。
スピーディーに検査、診察頂き、何はともあれ今の自分の状況を理解することが出来た。妻にメールで取り急ぎ報告をした。
妻へ、心配かけましたが、今日詳しい検査をしていただきとりあえず一安心です。
パパより
朝早くに家を出てからようやく帰宅した時には、すっかり日は暮れて夜になっていた。
バスを降りて、ふと夜空を見上げた。
満月が雲の合間から顔を出していて、私の帰宅を労ってくれているように感じた。