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招かざる訪問者との物語⑦

【精密検査 腹部エコー検査 検査結果診察】No7
1週間後、再びA大学病院にて腹部エコー検査とI教授の診察を受けに訪れた。
朝から雨が降り、肌寒く感じる。水溜りを避けながら人混みを掻き分けようやくA大学病院に着いた。
予約1時間前に検査室を訪れた。幸い直ぐに検査をして頂いた。腹部エコー検査。検査用ベッドに横になり、シャツを手繰り上げお腹を出した。ジェルを塗ってエコー検査が始まった。若い女性検査技師がモニターを見ながら腹部にエコーを押し当てる。「大きく息を吸って。」「吐いて。」と何度も声を掛けられる度にお腹いっぱい吸いたり吐いたりした。変な緊張感から上手く息を吸い込めない。モニターに写る自身の膵臓や肝臓と思われる画像を不安に思いながら言われるまま何度も深呼吸した。程なく検査は終了した。
夕方の診察まで、まだ大分時間がある。昼から食事抜きで検査を受けたので、お腹はぺこぺこだった。病院内にあるレストランに行ってみた。昼時間を随分過ぎていたが店の前に長い列が並んでいる。整理券を受け取り列に並んだ。ちょうど客の入れ替えのタイミングだったのか、予想よりも早く番号が呼ばれ店に入った。メニューをひと通り眺めてから、喉越しの良さそうな広東麺を注文した。一杯1600円にしては、小ぶりの器に入っていて随分と高いものだと思った。周りを見渡すと私より高齢の方々がハヤシライスやビーフシチューなどを、品の良さそうな面持ちで黙々と食事をしている。お腹が空いていたせいか、広東麺の甘いスープが身体中の細胞までジワリと染みて実に美味い。あっという間にに完食した。
I教授の診察を外来待合室でぼんやりと待った。
沢山の患者で溢れていて、皆、携帯をいじったり本を読んで待つ人など様々である。
予約時間を1時間以上経過してようやく、中待合室に呼ばれた。8部屋に区切られた診察室前にも沢山の患者たちが待っていた。
消化器内科外来診察室は、肝胆膵領域、上部消化管領域、下部消化管領域など、それぞれの専門医が診察にあたっている。最も奥に膵臓専門医のI教授診察室があった。I教授の診察は随分と丁寧に一人一人に時間をかけて行われる。私より早くに診察された患者さんはご夫婦での面談であった。30分近く経ってようやく診察室から出て来られた。40代の男性患者さんとその妻と思われる女性である。何となく疲れた面持ちてあった。どんなお話がされたのかは分からないが、おそらく膵臓の病気治療についての経過と今後の方針について詳しい説明を受けたのだろうと感じた。
私も今日、精密検査結果を受けて、I教授からどんな話をされるのだろう?中待合室で1人名前を呼ばれるまで長い時間に思えた。

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