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ハヤシライス

はじめに


なぜタイトルがハヤシライスなのかは、最後まで読んで頂ければ分かりますので是非、最後までお付き合いください。笑

福祉作業所との関わり

弊社は長年、福祉作業所と共にお仕事をしております。
お仕事の依頼には必ず『定期的にお仕事をお渡しできる事』を前提に弊社で作業の切り出しを行い、作業所にとってのベース収入となるように作業量も確保してお渡ししています。
特に弊社の『ジョイントクリップ』という学校などで作品を画鋲を使用せず掲示する際に使用する商品については、長年生産を続けており組立作業は全て作業所にて行って頂いております。
指導員の方のお話では、クリップの組立手順がシンプルであることと、成型品の組み合わせの際に『パチッ』と音がすることが利用者の方に人気なんだそうです。

この商品を組み立てるにはバネをセットして成型品と共に押し込む作業を1個につき2回行います。
つまり上記の商品を生産するには、20個×2回=40回のバネ入れを行う必要があります。
私の様な飽き性かつ集中力の無い不器用人間には、とてもじゃないですが続けられません。
本当に適材適所とはこの事で、その人に合った事を自分の能力を活かして働くことで誰かの役に立つことができるんだなぁと感じます。

暮らしランプ

 
そんな中、新たに依頼したい仕事ができた為、以前からお付き合いのある作業所にお声を掛けさせて頂きましたが『作業の難易度が高い』という事でした。
作業が可能な作業所を3か月ほど探しておりましたが、経実会のメンバーである山田木工所の山田社長のご紹介で暮らしランプの森口理事をご紹介頂きました。
待ち合わせに指定されたのは『なかの邸』。
なんか料亭みたいけど!?という感想しか出ませんでした。
というのもこの建物は、京都府長岡京市にある国登録有形文化財<中野家住宅>なんだそうです。
なぜ、ここに作業所があるのかというと・・・

作業所?ここで合ってる?

なかの邸は、障がい者支援団体である一般社団法人暮らしランプが運営しています。2017年、長岡京市から中野家住宅を活用するプロポーザルに選ばれ、なかの邸のプロジェクトは始まりました。一般的に障がい者の就労は、日中が多いのが現状です。しかし、社会には障がいの特性や生活リズムなどの関係で、夜間に就労を希望しながら働く場所がない人たちがいます。なかの邸は、「障がいのある人が、夜間に就労をすることができる飲食事業」として2019年オープンしました。この取り組みは、新しい福祉の形をつくるプロジェクトを支援する、日本財団の「はたらくNIPPON!計画」に採択され、地域に根ざした障がい者就労支援のモデルとなることを期待されています。

<おばんざいとお酒 なかの邸>HPより抜粋

ということで、長岡京市としても歴史的に意義のある建物を活用してほしいニーズと障がい者就労の為の飲食店としての活用とが一致したことになります。
ちなみに、表ではコーヒーの焙煎作業スペースおよび飲食店スペースとなっていますが、奥に入っていくと企業からのお仕事を行う作業場が併設されています。

なかの邸に入ると焙煎機が設置されています。
いい香りが店内に漂っています。
真剣に取り組んでおられますが・・・
お話すると凄く楽しんで作業されていました。

一人一人と向き合い調整する事=多様性

暮らしランプの代表を務める森口さんの現在に至るまでの話を聞いていると
特段に『障がい者』という事を意識して取り組んでおられるように感じませんでした。
いい意味で肩の力がぬけているというか、利用者と指導者という関係性ではなく『仲間』『友達』という印象です。
なかの邸の店員さんもホールスタッフは利用者さんが担っておられる訳ですが、行き届いたサービスで『障がい者だから仕方ないか』という妥協など必要のない、むしろ満足感の高いものでした。

結局、誰が何を得意としていて、その為にどんな仕事を用意するのか?という事がクリアできれば、障がいという問題はそれほど大きな問題ではないと改めて感じました。
ただ、その得意とする分野が人と若干違っていたり、若干狭いという事だけなんだと思います。
その違いや狭さが許容できない世の中になっている事が、健常者と障がい者という分断を生みだしているのだろうと考えます。

森口さんは『一人一人と向き合い調整する事』という言葉を良く使っておられました。
人である以上、それぞれ違っていて当たり前です。
その違いにぶち当たった時に、『その人』に向き合い自分が少し相手に会わせて調整をすることが多様性に繋がるとの事です。
この”調整”という言葉が印象的です。
折り合いでも、理解するでも、受け入れるでもなく調整をするんだそうです。
あくまでお互いが相手の為に自分を調整する。
一方に負担が偏ったり、理解させようとする多様性は、『わがままな駄々っ子』の状態で、相手の堪忍袋の緒が切れるとゲームオーバーなのかもしれません。
そして私が一番ハッとさせられたのは『付き合ってみたら、みんな可愛いんですよ。』という言葉です。
我々は誰かから聞いた話やイメージに囚われて、障がい者の方に対して勝手な像を描いてしまっているのではないか?
自分の人生を振り返って、いわゆる障がい者と呼ばれる方との接触回数を考えてみましたが僅かでした。
にも関わらず、『こういうもんだろ』と考えている自分がいます。
つまり多くの方が、障がい者に対して”食わず嫌い”の状態なのではないか、と思います。

20年後の理想の社会を語る森口さん(左)と繋いでくださった山田さん(右)
素敵な出会いに感謝しかない。

食わず嫌いの解消


食わず嫌い現象を解消するには、『取り合えず食わせる』だと思います。
この強制的なニュアンスに企業として取り組む意味があると私は感じています。
理想の社会は分かっているけど自分の力だけではクリアできない心の壁が誰にもあります。
まずは企業として取り組み仲間の力を借りながら、口に含み本当の味を確かめる事が必要だと思います。
森口さんは、その最初の一口をより多くの方に届けるために、企業とコラボをはじめ地域に開かれた取り組みを進めておられます。
従来の福祉から抜け出し、変えようとしている挑戦者が福祉の世界にいらっしゃいます。
多様性はお互いの”調整”によって成立するのであれば、企業側も調整をして関わろうとする姿勢が問われているのではないかと感じます。

私はハヤシライスを食べた事が無いのに『カレーでもなくシチューでもない得体のしれないもの』と食わず嫌いの状態でした。
結婚し妻が強制力を持って解消してくれました。
『食べてみたら、意外と悪くない』。
森口さんの気持ちは少しわかる気がします。
妻に感謝。

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