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外国の建築家の資格から一級建築士の資格を取得する

日本の建築士法の第4条第3項に以下のようにあります。

「外国の建築士免許を受けた者で、一級建築士になろうとする者にあつては国土交通大臣が、二級建築士又は木造建築士になろうとする者にあつては都道府県知事が、それぞれ一級建築士又は二級建築士若しくは木造建築士と同等以上の資格を有すると認めるものは、前二項の試験を受けないで、一級建築士又は二級建築士若しくは木造建築士の免許を受けることができる。」(2018年1月現在)

筆者はフランスの建築家の国家資格であるL'Habilitation à exercer la Maîtrise d’Oeuvre en son Nom Propre (HMONP)という資格を取得した後、この建築士法第4条の特例申請を使って日本の一級建築士の資格を取得しました。「取らないと気になるけど、取っても食えない」と言われる一級建築士資格ですが、まあ取っておくに越したことはなかろうと思ってのことです。

一級建築士の資格は国土交通省が管理しているので、国土交通省に問い合わせをしました。これこれこういう理由で一級建築士の特例申請をしたい、というと担当の部署を教えてくれます。担当部署へ問い合わせをすると、まず取得している外国資格の説明、その資格試験の説明、外国の建築学校の教育課程の説明、成績表、卒業証明書、主な実務実績、履歴書、今後の日本での活動予定、などをまとめたものを提出する必要がありました。

翻訳したりしなければならないので、結構時間がかかったのを覚えています。一級建築士の試験勉強の他にこのような書類作成に時間が取られたのは、個人的に結構しんどかったです。

必要書類をまとめて申請書と一緒に提出をすると、外国での実務経験年数、日本での実務経験年数に合わせて試験内容が言われます。(この辺は問い合わせをした時に担当の人に聞いてみるといいと思います。)私は実務経験もまだ浅く、日本での実務経験も無かったので、学科5科目(当時)全ての試験を受けることでした。ただ学科のみで、これが国土交通省が定める基準に達していれば、製図試験は受けなくて良い、というもの。友人にも「学科は勉強すれば取れるけど、製図はコツがあって資格学校に通わないとキビシイ」と言われていたので、製図パスは結構嬉しかったです。

一緒に受けた方で、実務経験年数があるので「構造」と「法規」のみという試験を受けている方がいましたが、これは実は逆に大変そうでした。なぜかというと、おそらくこの2科目は点数を稼ぎづらいからです。4科目、5科目あると自分の得意な科目で点数を稼いで、構造、法規が少し低くても総合で基準点に達していれば合格ですが、構造と法規だけだとその2科目で基準点に達しないといけないからです。あと、その上にさらに論文のみで受ける、という試験がありますが、これは合格率がものすごく低いという噂を聞きました。(外国の有名人建築家が受けて、軒並み落ちてるとか何とか。。まあ、真偽のほどはわかりませんが。)

いずれにせよ、私個人的にはせっかく特例があるのだから、この先日本で仕事をしようという気があれば、なるべく早めに取っておくことをお勧めします。試験を受けた時、フランスの設計事務所で所員として働いていましたが、コンペなどがなければ夜8時くらいには家に帰れるので、そのあと2時間〜3時間くらいは勉強する時間が取れ、それも助かりました。休日はよくエッフェル塔の目の前にあるcité d'architectureの図書室(建築学生か建築家なら無料で使用できる)か、追い込みの時期はポンピドゥセンターの図書室に行って勉強をしていました。ポンピドゥの図書室は普段は何時間も待たないと入れないのですが(ちなみに誰でも入れる)、一級建築士の試験がある7月くらいになると、夏休みで学生などがいなくなり人が減るからです。ポンピドゥセンターで一級建築士の勉強とはなんとも優雅だったなあ、と今では思います。

※ 以上の情報は筆者が資格を取得した時のものです。最新の情報については関係機関に問い合わせてください。ちなみにnoteの記事にする前に「フランス語建築用語集」というブログにコラムとして掲載していました。筆者は同一人物です。
海外で建築家の資格を取得された方の参考になれば幸いです。

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