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「夢は”金継ぎ師”」

#かなえたい夢

私のかなえたい夢は”金継ぎ師”になること。
平均寿命からすると、夢をかなえるのに残された時間はあと25年。
眼のピントが合わせにくくなった今、
やっと見つけた、自分が本当にやりたかったこと、
それは「金継ぎ」

伝統工芸には興味があって、寺社仏閣を訪れたり、美術館や博物館をめぐってみたり、テレビで伝統工芸番組が放送されると釘付けになって見ていましたが、「伝統工芸って良いね~」「昔の人はすごいね~」「きれいやね~」と思うだけ。

父はサラリーマン。
私が小学生のある日曜日、近くの山林に入っていき、竹を取ってきてあっという間に『竹馬』を作ってくれました。私が竹馬の練習をしていると、近所の友達も寄ってきて順番に竹馬の練習のしあいっこ。それを見かねた父が、そのあといくつか竹馬を作ってくれました。
竹馬ブームが去ると、家の敷地をぐるっと取り囲むように竹で垣根を作っちゃいました。

母は手先が器用なので若いころから「戸塚刺しゅう」にはまっていました。私が小学生に上がることにはパートをしながら、紙粘土で「ロマンドール」を作ってみたり、「ドライフラワーアレンジメント」をしてみたり、「アートフラワー」の道具を一式買って、空いた時間を使いながら型取りから裁断、染色、組み立てをして次々と作品を作っていき、時には1.5mほどのブドウの木のような巨大作品も作ってみたり。おかげで家の中は花だらけ。

このような両親のもとで育っているにもかかわらず、長年、私にはこれといった特技や趣味が見つかりません。
履歴書に趣味と特技を書くときには、当たり障りのないように「音楽鑑賞」「美術館巡り」などと書き、
子どもが幼稚園に通っていた時に、おままごと用のドレスがないと言われれば10着近くのフリフリのドレスを作り、
子どもが芋ほりで抱えきれないほどの巨大サツマイモを持って帰ってきたときには、それらを全部蒸かしてスィートポテトを作り、
近くの小学校で朝の時間の読み聞かせボランティアが必要と声が掛かればいそいそと出かけ、
巷でガーデニングが流行っていると聞けば箱庭でガーデニングもどきをやってみた。
仕事に就いても、あまり怒られることなくそれなりにこなし、
気付けば「シルバー」という文字が気になりだしてきた今日この頃です。

こんな風にしながら今まで生きてきて、
「今こそ輝けるシルバーを目指して!」
と日々悶々としながらも、焦点の合いにくい眼をきらきらと見開いてパソコン画面を見ていた時、
『金継ぎ』
なるものを発見!
「えっ、食器って修理できるの~~???」
「漆なんだぁ~~~」

次の日、なんとなく昨日の「金継ぎ」が気になりサイトを調べてみた。
「良いなぁ・・・」

また次の日、やはり「金継ぎ」が気になり、またまたサイトを検索。
「え~凄すぎ! こんなバラバラになったものでも修復できるんだぁ・・・」

私は取っ付きやすく冷めやすい性格。
まぁ、この金継ぎにしても1週間もすればどこ吹く風・・・になるだろうから、今はしばし様子見、様子見。

1週間後
やっぱり気になる
「どこかで教えてもらえるかなぁ?」と、再びサイトを検索。
地元のカルチャーセンターらしきところで、月1回全6回に渡って教えてもらえるらしい。さらに詳しいところまで習いたいとなると+12回かぁ。
「よし! 申し込んでみよう!」
ポチポチポチッとマウスをクリックしながら進めていくと、
「残念ながら満席でございます」と。
「あら残念・・・」

ならば、地元を脱出して、もう少し広い範囲で検索。

「金継教室」と入力して検索したところ、
なんともすてきなサイトを発見!
隅から隅まで読んでみた。
先生のお顔写真、先生のご両親のお顔写真
「へ~、家族3人でされているのね」
「それにしても、どれもこれもすごくきれいに直っている、直っているというよりかは元からそんな模様だったと思えるものもあるなぁ」
「なになに、この先生に習った人が海外で金継教室を開いてる?!」
「うん? ということは、この先生に教えてもらうことができるの?」
「でも、通うには遠いなぁ・・・」
「ん? 4~6日の短期での講座もやってるって???」
・・・
・・・
・・・
「やってみたい、・・・やれる?・・・やれそうな気がする」
「・・・いやいや、またいつもの熱しやすい性格が今最大限に爆発しているのかもしれない。しばらく様子見、様子見」

それから数日間は、「実際に教室の短期講習を受講するとなると・・・」と、
そんなことばかりが頭をめぐり、
『どの電車に乗るのか』を調べて電車に乗っている自分を想像し、
『教室近くのホテル』を検索し、そこで独りで過ごす自分を想像し、
『どのバス』に乗ればいいのか右往左往する姿も想像し、
『何日かの講習を終え』て帰る電車に乗っている自分を想像してみた。

独りでお店に入ってお食事をしたことがない、
特急電車の予約もしたことがない、
独りで日帰り旅行に行ったことがない、
まして、独りで宿泊なんて皆無、
今度行く土地は全くの初めてのところ。
今回行くとなれば、初めてのことが多すぎて、私、大丈夫だろうか。
・・・
いやいや、国内だから日本語が通じるじゃないか、スマホがあるじゃないか。

ピックアップしたネガティブ要素に私の気持ちはどう動くだろうと実験してみたが、「金継ぎ」への思いが強すぎた!
ホームページを開いて、もう一度隅々まで読んでみた。
「もう、行くしかない!」
ホームページ上のお問い合わせに「講習を受けたい」ことを書いて、
マウスポインタを【送信】ボタンの上にセット。
心臓がバクバクしてきた。
バクバクがバクバクバクに変わっていく。
「よ~し」、ポチっとな!

どっと汗が出てきた。

その日の夜、先生から返信メールが届きました。
今回の日程は4日間。約2か月先に行くことが決定しました。

それからは、すぐにホテルと特急電車を予約しました。
そして、図書館で手あたり次第「金継ぎ」の本を借りてきて読みました。
「金継ぎ」への熱は冷めるどころか熱くなる一方。


そして、待ちに待った2か月が過ぎ、いよいよ「金継ぎ教室へ」
教室の最寄駅から教室まではバスで25分。
先生から教えていただいたバスの時刻よりも2時間も早く最寄り駅に到着する特急電車に乗り、バクバクする心臓とスーツケースを抱えながらも足取り軽く行きました。

1日、2日と時間が過ぎ、緊張もクライマックスになってきて、身体が悲鳴を上げてきた。
「私の身体よ、なんとかあと2日もってくれ!」
ホテルの温泉に身体を委ねて、残り2日の鋭気を授けてもらった。

3日目、4日目。
とうとうすべての受講が終了。
「あぁぁぁぁ~~~、おもしろ過ぎた~~~」

今回は修理したい器を自分で持って行ったのですが、そのうちの1つはかなり古いものらしく、修理する箇所が非常に多く、自宅に戻ってからはその器をせっせと修理しています。
金継ぎで使用する漆は1度盛ると乾燥させるのに数日はかかるため、作業待ちの日が出てきます。
そこで、家の近くで開催される骨董市へいそいそと出かけ、割れた器を買ってきて、それらも一緒に修理しています。

今は「金継教室」から帰ってきて2か月ほど。
まだまだ若葉マークを掲げながら進めていますが、
国内では『思い出の器を修理してほしい』という依頼は多いらしく、実際に今回教えていただいた先生のご自宅には全国から送られてきた修理依頼の品物を入れた箱が山積みになっていました。
また、先生の講習を受講され海外で金継教室を開かれている方のお話によれば、海外でも金継ぎに興味を持たれて習いに来られる方がたくさんいて、教室も常に予約で埋まっているとのこと。

私もコツコツと修理を続け、2年後には金継ぎ師として工房を構え、ひとりでも多くの人の思い出の品を直して差し上げたいという夢を抱いています。

これが『わたしのかなえたい夢』です。

Fulfill my dream


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