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釜揚げ師たち〜#毎週ショートショートnote〜

K県はうどん製造の街として知られていた。うどんは、大抵どの都道府県でも食されているが、K県のそれは格別であった。

特に釜揚げうどんが有名だ。確かな歯応え、喉越し、小麦の味、どれをとっても最上級で、全国からうどんファンが集まった。

うどんの品質を支えているのは、鍛え抜かれた職人だ。
彼らは、「釜揚げ師」と親しみを込めて呼ばれていた。

優れた釜揚げ師になるには、強靭な肉体を持っていることが不可欠だ。
小麦を踏む脚力、大鍋を振る腕力が必要とされるからだ。

釜揚げ師たちは、うどん製造の前にトレーニングを欠かさない。
彼らは早朝から川沿いを並んで走る。K県でよく見られる日常的な風景だ。
「釜揚げ師、走る」というところから、「釜揚げ師走」と呼ばれていた。

親方の「もうええでしょう」の声があるまで走り続けた。
「もうええでしょう」の声は、SNSで話題となり、流行語大賞にノミネートされた。

しかし、流行語大賞を獲得したのは、釜揚げ師の名言「うどんは太えほどいい」、略して「ふてほど」であった。

(了)433文字


田原にかさんの「 #毎週ショートショートnote 」に参加しています。
お題は「 #釜揚げ師走 」でした。いつも素敵なお題をありがとうございます!

全部、フィクションですからね!!

#なんのはなしですか
#どうかしているとしか


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亜麻布みゆ
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