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さすがにキスまでは代行できない(#毎週ショートショートnote)

「俺さ、彼女できたんだ。他校に。」
幼馴染のタケルがそう告げた時、胸の奥が少しうごめいたけども、気のせいだと思い込んだ。

「へぇ…タケルに彼女かあ…よかったじゃん、大事にしなよ。」
「で…悪いんだけど。」
一呼吸、置くのがわかった。

「デート、予行演習してくれない?」


「予行演習」当日、地元のテーマパークで待ち合わせをした。小さい頃、家族ぐるみで来ていた場所だが、二人で来るのは初めてだ。タケルの私服を見るのも久しぶりだった。彼女とのデートでは、どんな服を着るんだろう。

「予行演習」は、順調に進んだ。ジェットコースターの待ち時間も他愛ない話をして、バカ笑いした。クラスの男子には、こんな姿見せられない。


観覧車からは、夕焼けが見えた。気がつくと、お互い黙っていることに、私は慌てた。

「か…彼女さんとは、ここでキスとか、しちゃうのかな!さすがに代行できないよ!」
笑ってくれると思ったタケルが、神妙な面持ちになっていた。

「ごめん。」
「え?…何が?」


「他校に彼女って、嘘ついた。そう言わないと、今更恥ずかしくてさ。」

(了)449文字


田原かに(たはらにか)さんの「 #毎週ショートショート」に参加しています。今回の裏お題は「 #接吻代行」(表お題: #節分胎教)でした。

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亜麻布みゆ
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