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不死鳥の唐揚げ〜#毎週ショートショートnote〜

路上で商人が呼び込みをしていた。

「さあさあお立ち会い、御用とお急ぎでなかったらゆっくりと寄っておいで!ご覧に入れましたるは、一見なんの変哲もないただの唐揚げ、しかしただの唐揚げじゃあございません、不死鳥の唐揚げとあいなっておるんでぇございます。」

巧みな売り口上に、通りすがっていた人々が足を止め始める。

「とある山奥の泉に住んでおります不死鳥、火鼠の皮で大きな袋を縫うこと何十年、幾重の岩を登り、時には獣に襲われ、片腕を食いちぎられ、傷だらけの体で不死鳥の棲家に辿り着いたんでぇございます!」

商人の周りに人だかりができる。

「不死鳥は居眠りをしておりました。そぉっと近づき、火鼠の袋でパシュウと包む、不死鳥はピィと鳴いても出てはこれない。同じ道を帰り、粉を不死鳥の全身にまぶし、ジュウと揚げるは三千度の油、カリッカリに焼いたのを一口味見するってぇと、あぁら不思議!来る時分に食いちぎられた片腕、ニョキニョキと生え、体中の傷、きれいさっぱり!さぁさぁ不死鳥の唐揚げだよ!」

路上は群衆の大歓声と拍手に包まれた。
ある青年がおずおずと手を上げた。

「あのう…唐揚げになれるなら、不死鳥じゃないですよね….?」

(了)497文字


田原にかさんの主催する、「 #毎週ショートショートnote 」に参加しています。今回のお題は「 #唐揚げ死なず 」でした。

今回は「がまの油」の売り口上をベースに作ってみました。似ても似つかぬものになってしまいましたが…

↓落語はこちら

↓売り口上はこちら

あと、「矛盾」という言葉の元になった故事成語もちょっとイメージしています。

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亜麻布みゆ
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