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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第5話-④
・第五話 存続協議会 その二
*
横田の小さな声が聞こえたのだろう。会場が再びざわついた。誰もが電話をとる横田に注目する。
「はい、沼太町の横田です……、はい、今はまだ協議会の途中ですが……、えぇ、それは可能ではありますが。……はい、一応出席者には確認させてもらってよろしいですか?」
横田は受話器の口を手で押さえながら、参加者の方を振り向く。
「みなさん、今、鈴井知事からの電話が入りました。要件はこの会議にリモートで構わないので参加されたいとの申し出です。これから、リモートで話しがしたいとのことなので準備します」
会場が今まで以上にざわめく。沼太町の職員が会議室に備え付けてある大型のモニターの準備を始める。まもなく道知事である鈴井の顔が映った。
「鈴井です。すいません、突然の申し出となったことをお詫びします。今日は瑠萌線の存続協議会の最終回答の日だったと思いますが、私も瑠萌線の廃線についてはとても関心がありまして、自分自身が後悔しないように協議会に参加させて頂きたい思い連絡をさせて頂きました」
そこまで鈴井が話すと、横田が出席者に「みなさん、知事がこのようにおっしゃられていますが、参加の件よろしいでしょうか?」
モニターに鈴井が映っている状況では、出席者があからさまに拒絶をする訳にもいかない。そのことを狙っていたのかは分からないが、会場の空気を察知した鈴井はなかば強引に再び話を続ける。
「今はどのような状況でしょうかね?」
若い道知事の質問に二十歳以上年上の横田が答える。
「鈴井知事、協議会は、まだ途中で結論は出されていません。今は大西瑠萌市長が協議会への復帰を先ほど願い出たこともあり、今から市長の協議会への復帰について可否をとろうとしていたところです」
「えっ、大西市長ですか? 大西市長が会議に戻られたのでか?」
大西が焦りながらモニターに映る鈴井に言葉を返す。
「あの、私は沼太町からの新しい鉄道の提案を聞いて、もう一度、瑠萌線の存続に挑んでみたいと考えを改めました」
鈴井の表情がその言葉を聞いて変わる。そして会場の出席者に向かって言葉をかける。
「新しい鉄道の提案? それはどのようなものでしょうか? 私もぜひお聞きしたいと思いますが可能ですか?」
つづく