プロローグ
病魔に襲われた。
いや、正確に言えば体質に不具合が出ただけか。
ある日突然、メリメリとガムテープをはがすような嫌な音が左耳に鳴り響いた。それからは唾を飲み込むとメリメリ・・・と不快な音が耳に響く。喉を抑えるだけでメリメリ・・・と鳴る。たまに声を出してしまうほどの痛みも走る。
病院に駆け込み診断された結果は、茎状突起過長症(けいじょうとっきかちょうしょう)。
耳の下の位置から舌骨に向かって突出している針状の骨(茎状突起)が、唾などを飲み込む際の筋肉の動きで、他の構造物に触れ、痛みや違和感を生じさせるらしい。
僕はこの骨が他人よりも無駄に発達し、首に痛みを与えているようだが、手術自体は簡単で茎状突起の先端を切除するだけで済むらしい。もちろん術後は喉が腫れるなどあるようだが、手術に危険性は低く、割と安心できたため、手術を決意し、入院手術が可能な大学病院の診察日を待っていた。
県内最大規模の病院はとにかく人気のようだ。初診を待たされること約一カ月。その間に僕の症状は完全に治まっていた。
しかし、自分の中に伸びすぎた骨があるのは恐怖であり、いつまた苦しい思いをするとも限らないわけで。
僕は、手術する気満々で大学病院初診日を迎える。