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おきにいりnote

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なんとなくいいな、の世界 (読ませていただいてる長編小説のしおりにも使用しています🍀)
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#文学

【小説】推し認欲求

【小説】推し認欲求

 お腹がすいているのに、ご飯を食べないで帰ることにしたのは、仕事帰りのお父さんと顔を合わせたくなかったから。
「お父さんには、まだ言わないでね」
「別にいいじゃない。おめでたいことなのに」
 さっき喜んでくれたお母さんは、ちょっぴり呆れ顔だった。

 薄暗くなった外は、異常な残暑が立ちのいて、秋らしい空気が心地よかった。遠回りして駅に向かうと、大きな公民館の前にある、インドカレーのお店に目が留まっ

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短編小説『知恵の実』1/4(1065文字)

短編小説『知恵の実』1/4(1065文字)

 昔から、【ハコ】を削るのは好きだった。

【ハコ】は白く、表面はザラザラしていて、一面の大きさが文庫本ほどの立方体。僕はまずそれを支給されると、角で手を切らないように気をつけて、面に余計な汚れがついていないかを点検する。

 といっても、なにかが付着していたことなんかないし、仮に汚れがついていたとしても、ヤスリで削ればいいだけの話なのだけど。

 点検が終わるとその一抱えもある立方体を分けていく

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短編小説『ニエモドキ』1/4(1470字)

短編小説『ニエモドキ』1/4(1470字)

 私の父の実家は田舎のお屋敷で、ときどきいろいろな生き物が迷い込むのだが、【ニエモドキ】のときはちょっとした騒ぎになった。

 それは中学にあがったばかりの春、週末に両親に連れられて、田舎に帰郷したときのことだった。

 お屋敷はとことん広く、表は畑で、裏に山。その山も先祖からの土地で、竹林があり、よくたけのこを鍬で掘るのに連れて行ってもらった。私が【ニエモドキ】という言葉を最初に聞いたのは、たし

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小説『インタビューパンチマンを捕まえて、そして大人になった。』

小説『インタビューパンチマンを捕まえて、そして大人になった。』

「えと、僕の頬に当たってる、この拳は何?」

「だーかーらー、聞いてなかったのかよ」

「うん、ごめん」

夕方になると、最近行くのを辞めた塾のことを考えしまう。
勉強も手についていない。

「インタビューパンチマンだよ」

「ああ、そんな話してたね」

そうそう、最近、僕らが住む辺鄙な街で世間を賑わせている連続事件の話だった。

てっちゃんは、テレビのリポーターみたいに背筋をシャンとして、僕にエ

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【四周年】進水記念日

【四周年】進水記念日

 当方は、毎年六月八日に、“進水記念日” と題する文章を航海している。本稿は、四回目である。
 読者諸賢の中に、毎年恒例と思われる方がいらっしゃれば、我が兄弟航路のファンとして認定いたしたい。過去三回をご存知でない方も、いやいやファンですよ――とおっしゃっていただけるなら、丸四年の旅路を共に祝いたい。

 旗揚げから今日に至るまで、兄弟航路のファンは、最低一人、必ずいる。その一人とは、当方の、要す

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【小説】蝶に宿りて

【小説】蝶に宿りて

 愛とは、見捨てないことだと、誰かが言ったそうです。けれど、見捨てるべき人を見捨てられない場合は、愛と呼べるのでしょうか。
 結局、私は何度裏切られようとも、母を見捨てられませんでした。

 六年ぶりの再会は、歌舞伎町で働いていた頃です。
 桜が咲き始めた三月の夜、どこで噂を嗅ぎつけたのか、母は客として現れました。金回りの良さそうな身なりで、目立つ黄色いジャケットを着ていましたが、瞬時に誰か分から

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雪の降る日に ~ショートショート410字~

雪の降る日に ~ショートショート410字~

 雪化粧の庭は、取り澄ましたような顔をしていた。
 母は、予定が書き込まれた壁掛けのカレンダーを指でなぞり、はたと思い出したらしい美容室に電話を入れた。
 
「俺が切ろうか?」
 柄にもない提案をすると、母は照れ臭そうに微笑んだ。
 
 板の間の窓辺に新聞紙を広げ、雪見席の美容室を即席でこしらえた。遠方の山並みは、どんよりと垂れ込める雲に閉ざされていた。
 母を椅子に座らせると、痩せ細った首に大き

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【自己紹介】甲府の自宅にて

【自己紹介】甲府の自宅にて

 弟よ、そして読者諸賢よ、私は大海原に憧れを抱く。緩やかな追い風を浴びながら、青白く光る水平線の彼方へ、好奇心の赴く儘に舟を漕ぎ出してみたい。山に囲まれた甲府(山梨県)の、昨日を焼き増したような景色から抜け出して、地図も持たずに旅をしたい。加工された電子的な情報ではなく、そこはかとない音や香も感じ取り、異世界の只中に浸りたい。
 時には舟の上に寝そべり、波のまにまに時間が贅沢に流れるだろう。いつし

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【小説】青朽葉

【小説】青朽葉

 法学部二年の真司は、清涼な空気にいざなわれ、早朝のランニングを日課に定めた。食欲の秋にかまけた挙句、怠惰な体になった去年を反省してのことだ。
 タオルを首に巻き、ウエストポーチを腰に巻く。両親と年の離れた弟が、戸建ての二階でまだ寝ているうちに発つ。イヤフォンで軽快な音楽を聞きながら、毎朝ほぼ同じルートを颯爽と走る。高校時代の彼は、バスケットボールの選手だった。
 閑散とした道に、様々な枯れ葉がぽ

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【小説】カネの準備は出来ている

【小説】カネの準備は出来ている

 夏のおびただしい日差しを避け、賑わう学食で特盛カレーを食べていると、嫌な話を小耳に挟んだ。
「シングルマザーの再婚率は、子供の性別によって五倍の差があるらしい」
 ちらりと振り返ったところ、男が女に語っていた。五倍は、流石に盛っていると思った。
「どっちが再婚しやすいの?」
「そりゃあ、女の子でしょう」
「ああ・・・なんか、気持ち悪いね」
 生じた偏見は、致し方ないのかもしれない。性的虐待に関す

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