羆説 問題(無料)
こんにちは、ほげーたです。初note投稿です。今回は漢文の「羆説」についての問いを作成してみました。というのも、「羆説」についてのサイトがほとんどなかったので、皆さんのお役に立てればと思ったからですね。訓読文を打つのが非常に大変なので、白文で妥協させていただきます(白文で読めることが基本ですし)。また、下線を引くことができないので、「何行目の○○」表記させていただきます。それでは参ります。
〈白文〉
鹿 畏 貙、貙 畏 虎、虎 畏 羆。羆
之 状、被 髪 人 立、絶 有 力 而
甚 害 人 焉。楚 之 南 有 猟 者、
能 吹 竹 為 百 獣 之 音。寂 寂
持 弓 矢 罌 火 而 即 之 山。為
鹿 鳴 以 感 其 類、伺 其 至、発
火 而 射 之。貙 聞 其 鹿 也、趨
而 至。其 人 恐、因 為 虎 而 駭
之。貙 走 而 虎 至、愈 恐、則 亦
為 羆。虎 亦 亡 去。羆 聞 而 求
其 類、至 則 人 也。捽 搏 挽 裂
而 食 之。今 夫 不 善 内 而 恃
外 者、未 有 不 為 羆 之 食 也。
〈問〉
(1)2行目「絶」3行目「甚」は読みが共通している。その読みを書け。
(2)9行目「愈」10行目「亡」の読みをそれぞれ書け。ただし、「亡」は終止形で答えなさい。
(3)6行目と11行目の「其類」、7行目の「其鹿」はそれぞれ何を指しているか簡潔に書け。
(4)12行目「不善内」とあるが、これはどのようなことを言っているのか、「猟師」という語句を用いて簡潔に書け。
(5)12~13行目「恃外者」とあるが、これは誰を指しているか、「外」を具体的に明らかにしたうえで簡潔に書け。
(6)13行目「未有不為羆之食也」について
①これを書き下し文に直しなさい。
②これはどういうことを言っているのか、次のア~エの中から1つ選び、記号で書きなさい。
ア 必ずしも羆に食われない。
イ 必ず悲劇が訪れる。
ウ 必ず羆に食われない。
エ 悲劇が訪れることがある。
〈解答〉
(1)はなはだ
(2〉愈・・・いよいよ(ますますの意)
亡・・・にぐ
(3)6行目「其類」・・・鹿の仲間
11行目「其類」・・・羆の仲間
7行目「其鹿」・・・猟師による鹿の鳴きまね
(4)猟師としての力を磨かないこと。
(5)ほかの動物の力に頼る猟師
(6)①未だ羆の食と為らざること有らざるなり。
②イ
〈解説〉
(1)「絶」は「非常に」の意で、「甚」は「ひどく」の意。
(2)本文の「走」も「逃げる」の意である。「愈」のように一字で同音を繰り返すのには「交(こもごも)」「数(しばしば)」「偶(たまたま)」「看(みすみす)」「各(おのおの)」がある。
(3)6行目の「其類」について、鹿の鳴きまねを聞いて貙がやってきたのだから「其」は鹿を指していることがわかり、「類」なのだから仲間を指していることが推測できる。11行目の「其類」も同様である。「其鹿」は貙が聞いたものである。つまり、猟師がまねた鹿の鳴き声「鹿鳴」である。
(4)「内」というのは抽象的にいえば「本来の力」、つまり、「猟師の持つ力」それが「不善」なので、「磨かない」や「改善しない」という意味となる。
(5)「恃む」は「頼る」と同意義。ここでは猟師のことを言っているのだから、頼るものは「動物の鳴き声(動物の力)」とわかる。
(6)①「未」は再読文字である(未だ~ず)。不は返読文字であることにも注意し、最後の「也」に接続するのは連体形であることにも配慮する。
②今までに「羆之食」とならなかったことはない(二重否定)と言っているのだから否定の意味ではない。よってアとウは消える。また、再読文字が二重否定を強調していることを加味すると、「必ず」の意を含んだイが正解となる。
〈最後に〉
いかがでしたか。漢文は句形と単語さえ覚えれば、ほとんど読めるので、ぜひチャレンジしてみてください。最後に現代語訳を掲載しておきます。
〈現代語訳〉
鹿は貙を恐れ、貙は虎を恐れ、虎は羆を恐れる。羆の姿は頭上に長い髪がかぶさり、人と同じように立って、非常に力があり、ひどく人を殺す。楚の南に猟師がいて竹を吹いて多くの獣の鳴きまねをすることができた。こそこそと弓矢とかめの中に入れた灯火を持って山に近づいて行った。鹿の鳴きまねをして鹿の仲間の気を引き、寄ってきたところを、灯火を照らして弓矢で鹿を射る。貙が猟師の鹿の鳴きまねを聞き、走ってやってきた。猟師は恐ろしくなり、そこで虎の鳴きまねをして貙を驚かした。貙は逃げ去って虎が来てますます恐ろしくなって羆の鳴きまねをした。虎もまた逃げ去る。羆はその鳴きまねを聞いて虎の仲間を探し求めてやってきたが、人であった。襲い掛かって引き裂いて猟師を食った。今このように、内面の力を良くしないで、外部の力に頼る人は今まで羆に食われなかったことはなかった。